研究課題/領域番号 |
18K12601
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研究機関 | 高千穂大学 |
研究代表者 |
橋本 栄莉 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (00774770)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 難民 / 国内避難民 / 強制移動 / 南スーダン / ウガンダ / 社会構造 / 親族 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、研究実施計画における研究目的のⅡ「ヌエル人難民の紛争・歴史経験と予言の相互生成過程」を捉えるための方法の一つとして、「複数の知/実践の体系と相互作用」をこれまでの調査結果と資料の検討により明らかにした。 平成30年4月から6月にかけて、これまでウガンダの難民定住地での調査と、南スーダンの国内避難民キャンプでの調査結果を整理・分析した。この結果は、平成30年7月にブラジル・フロリアノポリスにて行われた、国際人類学・民族学連合の年次大会において発表を行った。具体的には、難民定住地での親族や家族をめぐる規範に焦点を当てて、ヌエルの規範が避難先でどのように維持・再編成されているのかを明らかにした。 平成30年8月から11月にかけては、これまでの調査結果のうち難民・国内避難民の社会組織に焦点をあて、ヌエル社会の伝統的社会構造が、どのように避難先で変貌を遂げたかを明らかにするための資料を検討した。またこの結果について、平成30年12月に沖縄で行われた、日本質的心理学会年次大会にて発表した。 平成30年12月から平成31年3月にかけては、上記の検討の結果を、2本の論文にまとめ、出版に向けての作業を行った。一つは日本質的心理学会が発行する学術雑誌『質的心理学研究』に投稿した。論文タイトルは「難民の実践にみる境界と付き合う方法:ウガンダに暮らす南スーダン難民の相互扶助組織を事例として」である。もう一つは難民研究フォーラムが発行する学術雑誌『難民研究ジャーナル』に投稿した。論文タイトルは「強制移動民が形成する自治組織の比較分析――南スーダン、ヌエル人の国内避難民および難民を事例として」である。論文はいずれも受理・出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は現地調査こそ実施できなかったものの、これまでの調査結果をまとめて学会発表や学術論文を通じて発表することを通じて、既存の研究に対して新たな知見を加えることが出来たと考える。また、成果発表を通じて得た新たな課題は、今後の調査研究にとって有意味なものであることを確信している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、本研究課題のⅠ「スーダン地域の社会変容と予言者信仰」のうち、「諸精霊・神観念の相互作用:トランス・ローカリティと歴史性」を文献調査を軸に明らかにしていくことが望まれる。これまでの現地調査によってヌエル社会の「在来」信仰とキリスト教神学の共生状態は明らかになったものの、その「在来」信仰自体がどのような歴史的変遷を経て成立したかは十分に明らかになっていないからである。具体的には、イギリスの文書館で収集した史資料の検討やナイル系諸民族の民族誌の比較検討が必要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は現地調査に行く代わりに、文献調査を軸として論文執筆などを行ったため、旅費として計上した分を文献購入費に充てた。翌年度は、現地調査や学会発表のための旅費や論文投稿費として請求した助成金を使用する予定である。
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