研究課題
本研究の目的は、グローバル市場への包摂が急速に進む南アジアにおいて、従来カーストや民族、および宗教に強く規定されるとみなされがちであった食肉をめぐる文化を比較民族誌的に再考することである。2019年度は、大きく下記の3点で研究の成果が見られた。第一の成果として、カースト社会における食肉の分配をめぐる名誉のポリティクスが市場経済とどのように接続をしているのか、民族誌的記述とモラルエコノミー論を接合させて議論を展開した点である。本成果については、IUAESの国際会議にて口頭発表をし、ディスカッションを経て、現在理論的に洗練させ投稿の準備を進めている。第二の成果として、カースト団体を母体とした食肉加工販売会社設立の動きを、コーポラティズム論を参照しながら分析を進めた点である。本視点において、国内会議で口頭発表を行い、ディスカッションを経て現在も考察を進めている。また、2020年2月に、ネパールとインド国境の近代屠場視察を行い、新たなフィールドデータの収集と分析を行なっている。第三の成果として、国家主導の衛生管理に伴う文化的変容を、「白い肉」「赤い肉」という二つのローカルタームをもとに考察を進めた点である。本成果の一環として、日本文化人類学会大会にて口頭発表を行い、こちらも現在投稿の準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
フィールドワークや分析、成果の口頭発表など、大きな問題なく順調に進展できている。
今後も、研究計画書に記載していた通り、南アジア系社会での肉食文化の展開についてフィールドワークを進めていくこととする。なお、2019年度の国際共同研究加速度基金Aに新たに採択されたことを受け、2021年度にイギリス・オックスフォード大学にて研究を行うこととなった。そのために、ロンドンにおける南アジア系移民コミュニティの動態についてのフィールドワークを追加することも今後の研究の視野に入れている。
新型コロナウィルスの世界的流行を受けて、参加を予定していた国内研究会や国際会議がキャンセルされたため。
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関西学院大学社会学部紀要
巻: 133 ページ: 45-59
conference proceedings 2016: the annual Kathmandu conference on Nepal and the Himalaya,
巻: conference proceedings 2016 ページ: 130-144