研究課題/領域番号 |
18K12609
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
中川 加奈子 追手門学院大学, 社会学部, 准教授 (80782002)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肉食 / 食と宗教 / 南アジア / グローバル化 / カースト / ネパール / 近代化 / 公衆衛生 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、グローバル市場への包摂が急速に進む南アジアにおいて、従来カーストや民族、および宗教に強く規定されるとみなされがちであった食肉をめぐる文化を比較民族誌的に再考することである。2020年度は、大きく下記の3点で研究の成果が見られた。 第一の成果として、国家主導の衛生管理が強化されることに伴い、食肉に伴う文化がいかに変化するのかについて、「白い肉」「赤い肉」という二つのローカルタームをもとに考察を進めた点である。その中で、「白い肉」と呼ばれる近代的な工場屠畜を施され冷凍加工された肉がより先進的な生活の象徴となり、従来のカーストに根ざした伝統的な屠畜による「赤い肉」とは異なる価値体系を築きつつあること、また、両者の乖離が進んでいることが明らかになった。本成果を、査読付き学術誌に投稿し、掲載された。 第二の成果として、カースト団体を母体とした食肉加工販売会社設立の動きを、コーポラティズム論を参照しながら分析を進めた点である。本視点において、国際会議にて口頭発表を行い、ディスカッションを経て現在、英文学術誌への投稿準備を進めている。 第三の成果として、2020年2月に、ネパールとインド国境の近代屠場視察等、新たな フィールドデータの収集と分析を踏まえて、カーストの紐帯がネットワークへと読み替えられつつある動態を一般書にて報告するとともに、専門的な考察を加えて学術書への投稿の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスによるパンデミックを受けて、ネパールやインドでのフィールドワークの中止や延期を余儀なくされているものの、これまでに収集したデータの分析や考察による成果発表を行うことができ、概ね順調に研究を進展できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、研究計画書に記載していた通り、南アジア系社会での肉食文化の展開について研究を進めていくこととする。なお、2019年度の国際共同研究加速度基金Aに新たに採択されたことを受け、2021年度にイギリス・オックスフォード大学にて研究を行うこととなった。そのために、ロンドンにおける南アジア系移民コミュニティの動態についてのフィールドワークを追加することも今後の研究の視野に入れている。 他方で、当初予定していたインド・ネパールでのフィールドワークは、パンデミックを受けて困難になっており、2021年度までとなっていた本研究期間の一年間の延期を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスによるパンデミックを受けて、当初予定していたインド・ネパールでのフィールドワークが中止及び延期となったため。 2021年度の計画として、変異株の流行により当該年度においてもインド・ネパールでのフィールドワークは困難であることが見込まれるため、主に文献購入や英文校閲に使用予定である。
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