2020年度にはCOVID-19感染拡大の影響を受けて、海外での補足的な資料収集が実施できなかった。実施できた研究内容は、主に、1)これまでのフィールドワークの追跡調査で収集した映像データの通時的分析と、2)狩猟採集民バカたちが集団活動時の地理的地勢的情報の整理と分析である。 1)に関しては、果実の採集・加工に関する集団活動において、参加者たちにみられる相互行為を分析した。その結果、個々人に見られる作業の開始や一時的休止、再開などの進行ペースは、同じ場所で同じ作業をする他の人々の進行ペースと互いの関わりによって影響されることを明らかにした。とりわけ、同時に加工作業をする人数によって、相互の行為に影響する程度が異なることを明らかにした。この成果を英語論文にして投稿して、現在ではすでに掲載が確定され、印刷段階に入った。また、森で活動するときに、利用可能な資源や遭遇する人々との交流に聴覚の活用の様相を映像データに基づいて分析し、その結果が学術図書のコラムで掲載されることになった。 2)に関しては、1)のデータも加えて、森を移動する集団活動時に参加者たちが各自発見した資源を参加者メンバーとの即時の情報共有と、活動終了後のその他の人々との情報共有の様相について分析をおこなった。個々人には生活領域内の自然環境に対する利用の経験と範囲の差によって、それらに関する知識・認識が異なるが、集団で活動することによってそうした個々の知識と認識が即時な共有や、別の場での遅延した共有によって一定範囲内で共通する知識・認識になることが可能になるという結果が得られた。これに関して現在英語論文を執筆しており、国際学術誌に投稿する予定である。
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