日本は超高齢社会に突入し、高齢化が進んでいる。これは逆に言えば、社会内の子どものマイノリティ化が急速に進んでいるということでもある。そうした社会背景を踏まえて、次世代の社会を担う子どもの利益・権利を真に適正に確保することは重要な課題である。本研究は、各種法制度内の場面において、人々が子ども(未成年者)に対して持っているステレオタイプ・偏見・差別の構造を、総合的・実証的に解明することを目的としている。さらには、社会内・法制度内で子どもの利益・権利を真に適正に確保するための政策提言を目指す。 新型コロナウイルス感染症の流行の影響により、本来の最終年度だった2020年度には研究成果のとりまとめを完結させることができなかった。そのため、1年間延長した2021年度には、研究成果のとりまとめを中心に行った。実証研究を通じて、社会内における子どもに対する差別の存在を問題提起するとともに、子どもの利益・権利を確保するために必要な判断基準(許容される子どもと大人の区別・境界線)についての法理論的な考察を行うことができた。なお、関連して、離婚紛争における子どもの扱いに焦点を当てたオンライン調査を実施した。とりまとめた研究成果については、日本法社会学会関東研究支部で研究報告を行った。また、派生した関連研究について、法と経済学会、Law and Society Associationなどで研究報告を行った。そのうえで、本研究課題及び旧研究課題(18K12613)の研究成果を統合してとりまとめた単著本『子どもと法―子どもと大人の境界線をめぐる法社会学』を東京大学出版会より刊行することができた。また、研究成果の一部については、英語論文1本を執筆し、International Review of Law and Economics誌から刊行することができた。
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