研究課題
若手研究
大正期に登場した「社会学的法律学」の提唱者のひとりである穂積重遠の家族法理論(拡大生来嫡出子の承認、離婚(相対的離婚原因の導入、調停離婚の採用))を、彼の背景にある個人史的・社会史的研究と交錯させて分析し、穂積の外国法との向き合い方の一側面を明らかにした。それは継受法そのものを正面から否定させたり改変させたりするのではなく、それと併存しつつ、条理や調停といった手法を用いて巧妙に日本的価値観を問題解決の場に持ち込むことを目指した、社会に根差した実務的な方法であった。
近代日本法史
本研究を通して、現代における家族法学の方法論の原型を穂積重遠が築いたことが明らかになった。彼の学説の背景には、日本の伝統的価値観との調和を図らねばならないという要請が強かったという当時の時代状況があった。このような認識に立った上で、現代においても、彼に由来する方法論をそのまま適用できるのか、あるいはその方法論の限界性を認識して新たな方法論の模索に入るべきなのか、こうした点を実定法分野において今後考えるための一資料を提供できたと考えている。