研究課題
本研究は当事者が法システムにアクセスする際に生じることが多いと思われる様々な障壁について実証的に明らかにすることを目的としている。とりわけ、当事者が法システムを実際に活用する際の心理的側面に着目し、法システムから排除されやすい状況にあると思われる人々が法システムにアクセスする際に直面する困難性とその克服方法について、フィールドワークを通して実証的に解明することを目指すものである。最終年度も昨年度までと同様に文献調査を継続した。加えて、法システム活用の際の心理的障壁に対する克服方法を探索するために、先駆的取り組みをしていると思われる関連団体へ聴き取り調査を実施した。具体的には司法アクセスに困難を抱えやすい人々に対して法的支援を行っているカナダの団体に赴き、法関連機関への信頼感醸成の背景を探索した。最終年度に実施した調査及び昨年度までに実施した実証的調査から析出される共通項としては、法関連機関の担当者と利用者との間に育まれる安心感・信頼感が法システム活用の際に特に重要になってくる様子が観察された。そして、その安心感・信頼感は単に担当者が依頼者に接する際の態度に代表される属人的背景に伴なうものに起因するだけではなく、担当者が示す専門知識に起因する安心感・信頼感が法システム活用の際の心理的障壁を緩和している可能性が示された。一方で、そうした法システム活用の際の心理的障壁を緩和しうる要素は数値化が困難であり、その継続性の確保が課題である点も見いだされた。研究期間中はコロナ禍と重なり調査実施が困難な時期もあったものの、本研究にて実施した実証的調査及び文献調査から析出された研究成果を今後の研究発展につなげていきたい。
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自由と正義(日本弁護士連合会編)
巻: 75(1) ページ: 34-40
Journal of Offender Rehabilitation
巻: 63(3) ページ: 171-187