研究課題/領域番号 |
18K12619
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
粟辻 悠 関西大学, 法学部, 准教授 (50710597)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ローマ法 / 模擬弁論 / 古代レトリック / 法廷弁論 |
研究実績の概要 |
大セネカ及び伝クインティリアヌスの模擬弁論史料の分析を進め、それらの著作の法廷に向けた教育としての側面について、具体的な検討を継続している。 とりわけ、模擬弁論における登場人物の類型的な性格付けや、彼らの行為(もちろん模擬弁論上の、架空のものであるが)の動機をめぐって弁論者が議論を戦わせる部分に着目した分析が、現時点では最も進行している。模擬弁論における登場人物とその行為については、最近のものも含めた先行研究においても随所で扱われているが、そこではローマ世界における文学作品との関連(あるいは一つの文学ジャンルそのものとしての側面)や、ローマ人の人格を形成する道徳的なストーリーの構成要素としての側面が強調されることが多かった。しかし本研究では、このトピックを法廷に向けた教育としての有用性という観点から捉えなおそうとしている。具体的には、弁論者が各登場人物の性格付けやその行為の動機について、それぞれの取る立場(原告あるいは被告)にとって有利な設定・ストーリーを互いに戦わせている部分を分析の対象として、彼らの議論がいかなる具体的技法によって有効なものとされているのかという点を解明し、そしてそれが法廷に向けた訓練としていかなる意義を有するかということについて議論を進めることを試みている。 1月には比較国制史研究会の例会において、この問題をテーマとする研究報告を行い、関係する分野の研究者からの意見を聴き、さらなる分析の深化に向けて議論を戦わせることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大セネカ及び伝クインティリアヌスの模擬弁論史料の分析を進め、それらの著作の法廷に向けた教育としての側面につき、とりわけ模擬弁論における登場人物の類型的な性格付け及び彼らの行為の動機をめぐる弁論者の議論を扱った研究報告を1月に行えたことにより、最終的な成果の発表に向けて順調な進展が見られた。 ただし、中間的な研究成果を文章化して公表することについては、年度末からのコロナ禍もあって予定通りとはいかず、今年度の後半にずれ込む見通しである。 これらの点を総合的に勘案し、(2)の進捗状況とした。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には従前の分析をそのまま進行させる方針である。 今年度中には、少なくとも現時点において最も進行している部分に関しては、 研究成果を文章化して発表することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の学会・研究会等の予定がコロナ禍により概ねキャンセルされ、旅費に充当することを予定していた分の金額が未使用となった。
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