最終年度である今年度は、コロナ禍によって延期が重なっていたスイス・チューリッヒ大学における在外研究を実現することができ、受け入れ教員のバビュジオー教授をはじめとするヨーロッパの関連する研究者と、本研究課題に関する意見交換を行った。そこで得られた成果に基づき、投稿先の都合によりその時期は2024年度になってしまうものの、本研究課題につき欧文での論文発表を予定している。 上記研究成果(論文)の具体的な内容は、とりわけ2020年から2022年にかけて既に発表した論文「模擬法廷弁論における登場人物の造形とその動機の設定について」において展開した分析を基礎として、ローマの法世界におけるそれらのレトリック(弁論術)教育の影響がどの程度の範囲にまで広がっていたかを考察するものとなる。とりわけ、いわゆる「西ローマ帝国の滅亡」後にその領域を引き継いだ東ゴート王国における法廷弁護に着目して、レトリック教育の影響の程度とその社会的な意義について分析を加える。 また、ローマ法の法文史料に基づく分析としては、2023年に発表した「学説彙纂第50巻第16章邦訳」の成果を活用し、ローマ法におけるラテン語の特有の用法についての分析を進めることができた。その一部は、上記の論文における分析にも取り入れられる。 以上の研究成果は、日本においてのみならず世界的にも(法制史・ローマ史・古典の分野を含めて)類例の少ないものであり、広く世界に向けてその価値を問う意義のあるものであろうと考えられる。
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