本研究は、国家補償法における無過失責任規範について、必要性・根拠論・要件論という三つの側面に着目しつつ、その解釈論及び立法論のあり方を示したものであり、近年下火になりつつある当該無過失責任規範に関する学説上の議論に対して一定の指針を提示した点に、その学術的意義があると考えられる。また、科学技術が発展した現代国家においては、積極的な行政介入が求められる場面が増加する傾向にあるところ、当該無過失責任規範が、将来の行政活動への委縮効果を生じさせることを防止しつつも、救済の漏洩を許さないセーフティネットとしての役割を持ちうることに鑑みると、本研究には、一定の社会的意義も認められるように思われる。
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