研究課題/領域番号 |
18K12623
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
阪本 尚文 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (60707800)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 戦後歴史学 / 高橋幸八郎 / 岡田与好 / 二宮宏之 / 樋口陽一 / 杉原泰雄 |
研究実績の概要 |
2020年度は、これまでの研究の中間的なまとめとして、阪本尚文「経済史学と憲法学――協働・忘却・想起」(恒木健太郎・左近幸村編『歴史学の縁取り方――フレームワークの史学史』東京大学出版会 2020年、117-143頁)を公表し、憲法学から戦後経済史学にまなざしを向けることを通じて、経済史学のフレームワークと歴史実証・現状分析との協働ないし相克関係の一端を明らかにした。そのなかでは、具体的には、以下の四点を述べた。①戦後歴史学を牽引したフランス革命史家、高橋幸八郎の社会経済史研究(高橋史学)のフレームワークを確認した。②戦後第二世代を代表する憲法学者である樋口陽一と杉原泰雄が、自身の理論形成に際して高橋史学をいかに受容あるいは批判したのかを検討した。③高橋と大塚久雄の薫陶を受けたイギリス経済史家、岡田与好の問題提起を契機として繰り広げられた「営業の自由論争」と、高橋、岡田、そして高橋に師事したフランス近世史家、二宮宏之という三人の歴史家の問題構制を樋口がいかに継承して憲法学説を深化させたかを例に、「1970年代主権論争」以降の経済史学と憲法学の間の切断と連続を描いた。④それまでの議論を踏まえて、戦後経済史学の射程について、戦後経済史学が史実認識の面で克服されたとしても、日本国憲法に埋め込まれている(と信じるところの)理念的価値に照らして現実のわが国の政治や社会のあり方を批判しようとする限り、憲法学が戦後経済史学を再び想起し、その達成から何ものかを受け取る潜在的可能性は存在し続ける可能性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
福井県立文書館などでの資料調査のうえで、高橋幸八郎の歴史理論の形成過程を明らかにする作業を予定していたが、コロナ禍や育児休業を取得した結果、実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
福井県立文書館などでの資料調査や「営業の自由」論争の前提となる岡田与好の歴史理論の形成過程を、敗戦直後にまでさかのぼって明らかにする作業に従事したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で福井県などで予定していた資料収集ができなかったことと育児休業を取得したことが理由である。コロナ禍の影響が見通せず流動的だが、現時点(2021年4月)では、2021年度は2020年度に実施できなかった資料収集を実施する予定である。
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