研究課題/領域番号 |
18K12623
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
阪本 尚文 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (60707800)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高橋幸八郎 / ルフェーヴル / 京城帝国大学 |
研究実績の概要 |
2021年度は、戦後日本の比較経済史研究を牽引した経済史家、高橋幸八郎(1912-85年)の遺族から膨大な日記やフランス革命史の泰斗、ルフェーヴルが高橋に送付した欧文書簡などの寄贈を受けたことで、その整理と分析に急遽取り組むことになった。日記は、1941年11月7日に高橋が京城に到着した日から始まり、1980年に高橋が入院するまでの期間にして約40年、全80巻に及ぶ。それらのうち、京城時代に書かれた最初の14巻には、表紙に「青丘日記」と書かれている(青丘とは古朝鮮の雅称である。京城帝大同窓会誌の一つも『青丘』であった )。 高橋がその学問的基礎を築いた京城時代(1941-45年)について、高橋は敗戦直後に『大学新聞』に朝鮮論を寄稿しているものの、それ以降は奇妙なほど沈黙しており、東大退職時の座談会で、わずかに農村でのフィルードワークの体験などを語ったに過ぎない。対して、『青丘日記』からは、高橋が国民総力朝鮮連盟の活動の一環として、朝鮮半島で幅広く講演旅行を行っていたことや高橋がウェーバーを精読し、京城帝大での演習のテクストにしていたことなど、いくつかの興味深い事実が明らかとなった。また、この日記を手がかりに、朝鮮語新聞に高橋が寄せた記事も発見した。 日記は、整理、目録作成ののち、福島大学付属図書館で公開される予定であり、単なる史学史上の資料としてのみならず、植民地官僚の生活史に関心を持つ研究者による幅広い利用が想定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
福井県立文書館で資料調査をして、戦前の高橋幸八郎の歴史理論の形成を解明する作業に取り組むつもりであったが、今年度もコロナ禍の影響で実現できなかった。また、日記の解読が困難を極めたことも研究の遅れにつながった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、高橋の歴史理論のみならず、高橋およびその薫陶を受けたフランス史家たちと憲法学者の間の思想連鎖の分析にも従事したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で福井での資料収集ができなかかったことなどにより残予算が発生した。2022年度は資料収集を実施したい。
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