本研究は、憲法学が戦後日本を代表する経済史家、高橋幸八郎とその門下生の歴史研究といかに協働ないし相克したのかを分析することを当初の目的に据えたが、研究開始後に高橋関連書簡などを発見したために、それらの整理・分析し、高橋の憲法思想を剔抉することに労力を費やすことになった。紋切り型イメージに還元し切れない複雑な相貌を高橋史学は有しており、しかも、敗戦直後には早くも政治の基層に位置する憲法とそれが保障する基本的人権への関心を示していた高橋は、経済的自由にとどまらずに、前文、平等、97条、そして平和論へと自身の憲法思想を発展させていったことが、明らかになった。
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