研究課題/領域番号 |
18K12625
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
田中 良弘 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (10766744)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 行政罰 / 行政刑法 / 行政上の秩序罰 / 実効性確保 / 環境刑法 / 租税刑法 / 経済刑法 / 知的財産刑法 |
研究実績の概要 |
本研究は,行政罰に関する統一的法理論の確立に向けて,行政罰各論に焦点をあてて,行政法隣接領域をも含めた多角的・学際的観点からドイツ法との比較法的研究を行い,わが国の行政罰の基礎をなす法理論を探求することを目的とするものである。 第2年次である本年度は,日本法各論研究の対象として,前年度に基礎的研究を実施した①水産資源保護法,②食品安全法,③知的財産法について研究を深化させるとともに,④種の保存法及び⑤租税法について,基礎的研究を実施した。 具体的には,①水産資源保護法の罰則規定について,第1年次における法制度の整理・分析を基礎として,日本における違法漁業取締りの現状について文献調査及び実地調査を実施した。この成果については,論文として取りまとめ,2020年度(第3年次)ないし2021年度に公表する予定である。②食品安全法制については,第1年次において研究の成果を公表済みであるが,本年度においても,中国食品安全法治大会において日本における近時の法改正として取りまとめた結果を公表した。③知的財産法については,第1年次に論文を公表したほか,本年度において,他の行政法上の論点と合わせて論文として取りまとめ公表した。④種の保存法については,国際法研究者と連携しつつ,日本における法制度について整理・分析を行い,その結果を環境法政策学会および上海財経大学外国法フォーラムにおいて公表した。⑤租税刑法については,本年度において先行研究の整理・分析を実施し,その結果を踏まえ,第3年次において研究を深化させる予定である。 比較法研究の対象であるドイツ行政罰については,前年度に基礎的研究を行った⑥ドイツ環境刑法について研究を深化させるとともに,⑦ドイツ租税刑法について基礎的研究を実施した。これらについては,上記の日本法研究の成果と合わせ2020年度ないし2021年度に公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては,前年度の研究成果と合わせ,日本法に関し,水産資源保護法及び種の保存法,食品安全法,知的財産法並びに租税法の4つの法領域を取り上げ,それぞれの分野における行政罰について整理・分析を行うとともに,その成果について,共著書の刊行及び学会等における口頭発表を行っており,概ね研究計画に沿った進捗状況であると評価できる。 日本法研究に関して研究計画において予定していなかった点としては,水産資源保護法及び食品安全法について,前年度において構築した国外研究者を含む他の分野を専門とする研究者らとの連携体制を継続することができたこと,また,本年度においても,新たに種の保存法について同様の連携体制を構築することができたことが挙げられる。この連携体制は,次年度においても引き続き維持される予定であり,研究のさらなる深化と多角的な分析という観点から有益なものと考えている。 比較法研究の対象であるドイツ法については,本年度において,前年度に実施した研究と合わせ,ドイツ環境刑法及びドイツ租税刑法の2つの法領域について研究を実施しており,日本法と同様,概ね研究計画に沿った進捗状況であると評価できる。 他方において,ドイツ法研究に関して研究計画において予定していなかった点として,世界的な新型コロナウィルスの感染拡大の影響により,本年度後半(2~3月)において実施する予定であったドイツでの在外研究を実施することができなかったことが挙げられる。この点については,研究最終年度である第3年次において,本年度分と合わせてドイツでの在外研究を実施する予定であるが,世界的な新型コロナウィルスの感染拡大の収束の見通しが不明であることから,現時点では在外研究の実施が不確実な状態である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である第3年次においては,これまでの研究成果を踏まえ,比較法研究の対象であるドイツ行政罰の各論研究を重点的に実施する予定である。 具体的には,本年度までに実施した日本法研究の成果について取りまとめつつ,ドイツ環境刑法及びドイツ租税刑法に関する研究をさらに深化させるとともに,新たな研究領域として,ドイツ経済刑法及びドイツ知的財産刑法を取り上げ,それぞれの法制度及び学説等について整理・分析を行う。また,3年間に実施した各法領域におけるドイツ行政罰の各論的分析の結果について取りまとめ,わが国における行政罰各論と比較することにより,わが国における行政罰に関する統一的法理論の確立に向けた示唆を得る。 上記の目的を達成するための研究の手法としては,日本において入手可能な日本法及びドイツ法の各種文献調査を実施するほか,ドイツにおいて一定期間の在外研究を実施し,彼の地における研究者と連携し,行政罰に関する日独比較法研究を行う予定である。ただし,ドイツにおける在外研究については,世界的な新型コロナウィルスの感染拡大の影響により2019年度において実施することができなかった上,2020年度においても実施が困難となることも想定される。その場合の対応としては,本研究の研究期間を1年間延長し,世界的な新型コロナウィルスの感染拡大が収束した後に,あらためてドイツにおける在外研究を実施することにより,研究目的を達成することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた最大の理由は,世界的な新型コロナウィルスの感染拡大の影響により本年度2~3月にかけて予定していたドイツでの在外研究が実施できなかったことである。これにより,在外研究の費用として予定していた旅費が大幅に繰越しとなったほか,現地においてドイツ語文献の購入を予定していた物品費についても同様に繰越しが発生した。なお,物品費については,若手研究における独立基盤形成支援(試行)による追加配分額が初年度に3年分まとめて交付されたため当初から繰越しが予定されていたことも,次年度使用額が大幅に生じた理由として挙げられる。 これらの理由によって生じた次年度使用額については,2020年度(次年度)において,2019年度(本年度)において実施する予定であった分と合わせて在外研究を実施することにより使用する予定である。なお,2020年度においても新型コロナウィルスの感染拡大が収束せず在外研究が実施できない場合には,研究期間を1年間延長し,研究目的に必要な在外研究を実施する予定である。
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