前年度に引き続き、ディシプリンとしての憲法学という観点から検討を行った。フランス憲法学の状況については一定の成果が得られたため、「ディシプリンとしての憲法学」『憲法学のさらなる開拓』)として、これまでの研究の総括を行った。日本の大学制度および憲法学の歴史についての文献を収集した。大学史においては、日本の大学制度が明治維新後の富国強兵政策のもと、国家的な意向が強く働いていたこと、それに基づいて大学の自治や学問の自由といった価値の歴史的な基盤が存在していないことなどが、独仏の大学制度との比較において重要である。本来であれば日本の大学史研究の成果を、フランスおよびドイツの大学制度と比較して検討する段階に進むべきであったが、コロナ禍によって図書館が使えない時期が長く。また、海外からの文献の取り寄せもほとんどできなかったことに加え、所属機関の変更などによって実質的な中断を余儀なくされた。もっとも、研究の方向性自体に変更を加える必要はないと考えられるため、今後は日本の研究成果とこれまでのフランスの憲法学の歴史とを比較検討していく予定である。
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