アメリカ憲法学における、表現内容規制における内容中立性原則と「保護されない言論」の法理とは、緊張関係に立つ。「保護されない言論」の法理は、Chaplinsky v. New Hampshire判決に由来するが、この判決は、ある表現範ちゅうが言論の自由の保護範囲から除かれる理由につき、諸要素を指摘するものの、その根拠を明確にはしていない。そのような背景からか、近年の連邦最高裁判決においては、言論範の無価値性や害悪よりも、むしろ、歴史あるいは伝統の有無が重視される傾向にある。本研究では、言論の無価値性や害悪、思想の自由市場論の意義等に照らし、上記緊張関係につき考察を加えた。
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