研究課題/領域番号 |
18K12641
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 雄大 東北大学, 法学研究科, 助教 (70802221)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 難民 / 人格 / 地位 / 住民 / 国際法 |
研究実績の概要 |
本研究課題の交付申請書では、「研究の目的」として、「『難民』をめぐり、何が『問題』であり、何が『解決』であるのかを明らかにする作業を通じて、国際社会の協力を可能にする頑健な認識の形成に寄与すること」を掲げていた。これに関連して、2019年度は、たとえば、特に、論文「難民の国際的地位と人格―戦間期における『住民incola』論の援用による対抗―」を執筆し、雑誌『東北ローレビュー』に寄稿した。同論文では、難民の国際的地位に関する最初の法文書が起草された戦間期の或る特殊な文脈のなかで、それ自体ローマ法に起源をもつが、19世紀中葉に定式化されたヴァージョンの市民法理論「住民incola」論が、どのように援用されたのかを扱った。およそ法文書の解釈にあたり起草時の議論や何らかの「起源」を探求する方法は、オーソドックスなものであると思われる。しかし、難民の地位に関する国際法については、同時代の動態に目を奪われ、こうした作業が疎かにされてきたようであった。そこで、これを補った。 同論文に中心的に取り上げた「住民incola」論は、本研究のもう一つの方法論的な柱である「国民」概念の研究にも(特に、国家の成員資格の根拠をその国家の基本的理念と時々の政策的考慮に関連づけて論じられる点で)深い洞察を与えうるものでもあるが、2019年度までの研究では、同概念について、特に19世紀中葉と戦間期との間に挟まる時代の理論と実行に関する調査と分析が十分ではなく、2020年度以降の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響により出入国が制限され、当初予定した外国(フランス)での文献・資料の収集が困難となったため、遅れている。それがどれほどの遅れであるのか正確に評価することは困難であるが、本研究自体は、特定の史料の有無に完全に依存するものではなく、規範的側面を含むため、その遅れは比較的軽微であるとも考えられる。 また、本研究が主な素材とする戦間期に公表されたフランス語の文献・資料については、すでに著作権が切れ、オンライン上に公開されているものが多くあることも、このように考えられる理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当面は新型コロナウイルスの影響により出入国が著しく困難になると考えられることから、外国での文献・資料の収集を断念し、手元にある文献・資料を基に研究を進めるかたちに変更する。特に、当初計画したよりも理論的研究の厚みを増すことにしたい。また、感染拡大に伴う出入国の制限または禁止により、本研究の計画時点で間接的に念頭に置いていた同時代的な課題も、今後、その性質を変えていくものと予想されることから、予想し得る範囲の将来を視野に入れ直し、手元にある文献・資料をまた別の観点から解釈し得ないかを考えることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により出入国が著しく困難となり、予定していた外国での文献・資料収集を中止せざるを得なくなったため。
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