研究課題/領域番号 |
18K12642
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
付 月 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (70522423)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 無国籍の防止 / 無国籍児 / 特別養子縁組 |
研究実績の概要 |
本研究課題について、2019年度においては、主に以下の通りの内容及び方法にて実施を行った。まず、前年度に引き続き、日本国内における本研究の主な対象者、すなわち、国籍法第2条第3号に規定されている「日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、または国籍を有しないとき」に該当すると思われる子ども/者について理解を深めるために、文献調査を行ったとともに、無国籍研究会をはじめとする関連の研究会や講演会、学会、シンポジウムに参加して最新の情報を収集した。次に、国籍法第8条第4号に規定されている「日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有するもの」、すなわち緩和した要件で帰化される可能性のある子ども/者についても、文献調査および研究会やシンポジウム等で積極的に情報収集を行った。そのうち、「日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者」については、特別養子縁組申立事件にかかる審判例(日本で出生した、養子となる子が無国籍であると認めた上で特別養子縁組を認めた審判例2つ)ついて検討し、その成果を判例評釈として公表した。また、社会保障(法)関連の書籍においても、本研究の成果の一部を反映している。さらに、比較法的見地からの検討についても、文献調査を中心に進めた。これは、前年度にオランダ・イタリア・スペインの3カ国で行ったインタビュー調査をベースに、追加の文献収集を行う方法で進めた。比較法的見地からの調査については、国籍法に加えて、移民法、家族法、さらには歴史的背景に至るまで幅広く、引き続き行うことを要するものであることを確認した。文献調査および現地調査はともに、次年度において集中して行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の2年目に該当する2019年度においては、前年度の文献調査および現地調査を踏まえて、文献調査を中心に進めることができたため、おおむね順調に進展しているといえる。ただし、2月末以降は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の懸念からヨーロッパでの現地調査については制限があり、また、日本国内においては3月以降に予定されていた学会等の中止が相次ぎ、図書館の利用もままならなくなったため、現地調査および文献調査のいずれにも影響が出はじめている。
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今後の研究の推進方策 |
2020(令和2)年度においては、比較法的見地からの研究、つまり、日本の国籍法第2条第3号と同様に無国籍の発生防止を目的とした規定をもつ欧州主要諸国の法律及びその解釈・適用について、本課題研究の初年度において行われたオランダ・イタリア・スペインでの現地調査および2年目に行った追加調査を踏まえて、集中的に行う予定である。そのために、本務校および受入先機関の双方の許可を得て、ドイツの研究機関に1年間研究滞在を行う体制を整えていた。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大(パンデミック)により、ドイツに長期滞在しながらの文献調査および現地調査を断念せざるを得なくなった。現時点では、本務校ないし自宅にいながら、文献調査を進めることを考えている。新型コロナウイルス感染症の拡大による無国籍・出生未登録の子どもへの影響が、断片にではあるものの世界各地で報告されている。このような新しい視点ないし問題についても、情報収集をし、本研究課題のなかに取り込んでいきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度における直接経費に残額が生じたのは、参加予定であった日本国内における学会やシンポジウムが、新型コロナウイルス感染症の感染予防のために相次いで中止になり、また不要不急の外出自粛により図書館へ直接赴くことができず、出張を取りやめざるを得なくなったためである。生じた残額を次年度に繰り越し、新型コロナウイルス感染症の収束した場合、図書館および学会・シンポジウム等に赴いて文献収集を行うために使用することを予定している。もし新型コロナウイルス感染症の収束が見込まれない場合は、文献複写・取寄サービスや図書購入に当てることを計画している。
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