研究課題/領域番号 |
18K12644
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中井 愛子 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (00815722)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中米統合機構 / 国際法の国内適用 / 地域統合 / SICA / 中米司法裁判所 |
研究実績の概要 |
本研究の第1の目的は、超国家的な地域機構の1つである中米統合機構を対象に、地域条約、各国の国内法、国内裁判所および地域国際裁判所の判例を資料として、同地域諸国の国内法秩序における共同体法およびその他の国際法の適用の状況を明らかにすることにある。その先に、世界の他の地域機構における同様の実行との比較研究を予定している。 本年度は現地調査を計画していたが、現地の政情悪化等により実現できなかった。次善策として、北米・南米の近隣諸国で資料収集を行いつつ、2年目以降に予定していた他の地域との比較研究の準備を前倒しして進めた。結果的に、地域共同体法の一般的意義と比較に関する総論的・理論的な研究が先行して進む形となった。 研究成果の発表として、ブエノスアイレスで開催されたラテンアメリカ国際法学会(Sociedad Latinoamericana de Derecho Internacional)の隔年次大会で講演"Bridging the Perception Gap between Investing States and Host States: Rethinking Calvo, Drago, and Other Latin American Doctrines"を行い、現地の研究者と有意義な交換を行った。地域国際法及び地域的な司法による紛争解決は、一般に、グローバルな国際法に抗い、地域的な特殊な妥当性を追求するものとみなされてきた。だが、中南米の地域的な法実行の史的展開を検証するならば、国内・国際、地域・グローバルの各法領域の適切な接合の必要を顕在化させ、逆にグローバルな司法的紛争解決を促進する機能を果たしてきたともいえる。この知見によって、同種の現象の今日的な展開である、地域共同体法とその他の国際法それぞれの国内適用に関する各地域・各国の法実行を比較する意義が有意に補強された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、中米諸国の政情・治安の急激な悪化により、現地調査の実施が困難となった。その分を北米・南米の近隣諸国での調査研究で補い、場合によっては次年度以降に予定されていた調査を先取りして行うことによって、おおむね当初予定していた水準まで研究を進めることができた。しかし、最終的な研究目的の達成には、中米各国での調査が不可欠であり、先送りした現地調査の早期の実現とそれに伴う次年度以降の研究計画の修正が求められる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
2年目、3年目の目標として以下の3点を達成したい。第1に、本年度の活動で収集した資料・知見と、2年目以降に行う中米諸国での現地調査によって新たに得られるべき資料・知見をもとに、中米統合機構加盟国の国内法秩序における国際法の地位およびその国内適用のあり方を、各国の法制と主要裁判例に基づいて実証的に解明する。この作業は共同体法とその他の国際法のそれぞれにつき行う。中米司法裁判所は米州人権裁判所が排他的に管轄する事物には管轄権を持たないこととされており、地域国際裁判所の間で管轄権の分配が行われていることにも留意する。第2に、わが国では、中米統合機構・中米司法裁判所に関するこれらの知見が整理された形で紹介されたことがないため、邦語または英語の論文として研究成果を発表する。第3に、北米、南米、欧州等の他の地域機構における紛争解決制度と中米統合機構のそれとの比較、各地域における国際法の国内適用のあり方との比較を進め、それぞれの実行を相対化して世界的な全貌を提示するための基礎をつくる。必要に応じて追加的な現地調査・資料収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は中米諸国における現地調査を予定していたが、同地域諸国の政情不安の増大にともなう治安の悪化等により、実現できなかった。そのため、その分の予算を次年度に使用することとなった。中米諸国の治安は改善傾向にあるので次年度は現地調査を実現できる見込みである。
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