本研究においては、日本も含めた非ヨーロッパ世界の諸社会が、近代ヨーロッパに起源を持つ国際法という規範をどのように理解し、受容していったか、あるいはしなかったのかという課題を、19世紀末から20世紀初頭のアラビア語圏に注目し、特に当時の人口動態上重要なインパクトを持ったシリア・レバノン系知識人の役割に注目して検討したものである。検討の結果として、当時の国際法学上、主流になりつつあった実証的な国際法学とは異なるものが広く伝達されていたこと、そして各論者の政治的立場を反映した形での言説の中、国際法の観念はあくまで各自の政治的主張を裏付けるための道具として用いられていたことが確認された。
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