研究課題/領域番号 |
18K12649
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
早津 裕貴 金沢大学, 法学系, 准教授 (60732261)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 公務労働従事者 / 非典型雇用 / 日独比較法研究 |
研究実績の概要 |
「非正規」公務員は、現行法上例外的な位置付けだが、現実には、公務員全体の約2割に達しており、例外的な勤務形態ではなくなっている。本研究は、日本においては「法の狭間」に陥っているともいわれる「非典型」類型の公務労働従事者について、ドイツ法との比較研究を行うことで、新たな規制原理と解釈原理を探求し、本問題に関する新たな解決視点の提供を試みるものである。 平成31(令和元)年度においては、平成30年度に日本労働法学会で行った本研究課題に関わる個別報告につき、同学会での労働法研究者・行政法研究者らの指摘も踏まえたうえ、査読付き論文として公表したほか、特に「非正規」公務員と集団的労働関係法との関係、ないし、その労働条件決定過程への関与の在り方に関する研究を、ドイツ公務部門における展開(特に、労働基本権制約に服する官吏の法制度に関する最新の議論動向と、労働基本権保障を全面的に享受する公務被用者に関する法制度、また、双方の関係性に関する分析)との対比を交えつつ進めた。 また、次年度にかけて遂行予定の公務部門における均等・均衡処遇の実現の在り方に関する研究にも着手し、これまで十分検討されてこなかった当該問題について、民間法制と公務員法制の双方を視野に入れた横断的な保障体系の在り方の提示に向けた検討を進めている。 これら研究を背景に、総論的検討として、「公務員の法的地位に関する日独比較法研究」(日本労働法学会誌132号199-210頁)を公表したほか、集団的労働関係法との関係では、「労働基本権の制限-名古屋中郵事件」(労働法律旬報1955号24-42頁)を公表するなどしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31(令和元)年度においては、本研究課題の総論的部分に関する研究成果を学会報告での指摘も踏まえた形で査読付き論文として公表するとともに、「非正規」公務員の法的地位も念頭に置いた、労働条件決定過程への関与ないし労働基本権の行使の在り方に関する基礎的研究を概ね完遂することができた。 このほか、令和2年度にかけて遂行を予定している公務部門における「正規」「非正規」間の均等・均衡処遇の在り方に関する研究についても、既に、基礎的な分析を完遂しており、計画通りに研究成果を公表できることを見込んでいる。 また、日本における実務家や当局関係者、現場労働者に対する聞き取り調査も、前年度に引き続き随時実施した。これによって、新たに導入される法制度への対応状況や、その問題点などが一層明らかになり、平成30年度から継続している研究基盤の整備も進展させることができた。 このように、研究成果の公表や日本国内での調査活動については順調に遂行することができた一方、平成31(令和元)年度に実施を予定していたドイツでの現地調査については、所属研究機関に変更があったことのほか、コロナウイルスによる社会情勢への影響も重なり実施することができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度においては、当初計画通り、公務部門における均等・均衡処遇の在り方に関する研究を進めるとともに、公務部門における派遣・民間委託に関する基礎的研究にも着手する予定である。 他方で、平成31(令和元)年度および令和2年度に実施予定であったドイツでの現地調査については、社会情勢との関係で実施の見通しが立っておらず、実施不可となった場合に備え、文献調査の拡充等による対応も検討している。このことは、国内調査についても同様であり、併せて遠隔通信等を用いた調査についても検討予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していたドイツでの現地調査が社会情勢の影響などにより実施できなかったため、次年度使用額が生じた。この点については、令和2年度にまとめて実施することを予定しているが、社会情勢の推移により再度変更を余儀なくされる可能性がある。
|