研究課題/領域番号 |
18K12649
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
早津 裕貴 金沢大学, 法学系, 准教授 (60732261)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 公務労働従事者 / 非典型雇用 / 日独比較法研究 |
研究実績の概要 |
「非正規」公務員は、現行法上例外的な位置付けだが、現実には、その割合は公務員全体の約2割に達しており、例外的な勤務形態ではなくなっている。本研究は、日本においては「法の狭間」に陥っているともいわれる「非典型」類型の公務労働従事者について、ドイツ法との比較研究を行うことで、新たな規制原理と解釈原理を探求し、本問題に関する新たな解決視点の提供を試みるものである。 令和2年度においては、「非正規」公務員問題における主要課題(雇用保障・処遇格差是正・労働基本権)に関する基本的視座の整理を行う研究成果を公表したほか、公務部門における「正規」・「非正規」間の均等・均衡処遇の法的実現の在り方について、民間法制と公務員法制の双方を視野に入れた横断的な視点から、新たな分析視座を提示する成果の公表も行い、さらには、昨今の新型コロナウイルス禍も念頭に置きつつ、公務部門における「非正規」化が、いかなる課題を惹起しているのかに関する日独比較についての検討の深化についても検討を進めた。 これら研究を背景に、総論的検討として、「『非正規』公務員をめぐる『法的』課題」(季刊労働者の権利335号69-77頁)を公表したほか、均等・均衡処遇との関係では、「公務部門における『正規』・『非正規』間の均等・均衡処遇の法的実現の在り方に関する検討」(季刊労働法269号71-88頁)を、新型コロナウイルス禍も視野に入れた検討として、「ドイツにおけるコロナ禍と雇用維持に向けた方策の現状」(法学セミナー793号50-57頁)を公表するなどしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度においては、研究成果の公表は概ね予定通りに進み、また、本研究課題の集大成である学術図書の出版に向けた準備についても、着実に遂行することができた(令和3年度研究成果公開促進費(学術図書)課題番号21HP5103が採択されている)。 他方で、新型コロナウイルス禍の影響もあり、ドイツでの現地調査を行うことができておらず、この点には大幅な遅れが生じているほか、国内調査にも支障が出ていることなどに起因して、派遣・民間委託労働者に関する検討課題についての研究については遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度においては、当初の計画通り、本研究課題の集大成である学術図書の出版のほか、日本労働法学会での学会報告(ワークショップ)にもエントリー済みであり、随時、本研究課題の研究成果を発信していく予定である。 しかし、他方で、新型コロナウイルス禍の影響もあり、本研究課題の基軸であるドイツでの現地調査については、引き続き実施の見通しが立っておらず、本研究課題遂行の一部にも支障が生じていることから、本研究課題の補助事業期間の延長も含めた対応を検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス禍の影響により、本研究課題の中核要素として位置付けていたドイツでの現地調査を実施することができず、国内調査についても、大幅な制約が伴ったことに起因して、関連費目に関する大幅な次年度使用額が生じた。 今後、情勢の回復をみて、次年度内での調査が十全に実施できそうであれば、その段階で調査を随時実施し、関連予算を使用していく予定であるが、いまだ見通しは不透明であるため、本研究課題の補助事業期間の延長等も視野に入れている。
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