研究課題/領域番号 |
18K12651
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
井川 志郎 山口大学, 経済学部, 講師 (90804344)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 経済統合と労働法 / 国際的経済活動の自由 / EU労働法 / 労働時間 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、主に後述1~3の観点から研究を進め、1および3については具体的な研究成果を公表した。 1. まず、本研究課題設定の前提となる研究、すなわち、EU経済統合下における国際的経済活動の自由と労働法との相克関係についての研究である。経済統合が労働法にもたらす課題を解決しうるものとして、労働者の国際移動の自由の可能性と限界を探るのが、本課題の目的であった。そこで、そもそも経済統合が労働法にどのような課題をもたらしうるのかを、EU法を素材として検討した。研究成果は、単著の形で公表した。 2. 次に、当該単著で課題として残したテーマ、すなわち、EUにおける越境的労働者配置をめぐる新たな立法動向についての研究を行った。最新の動向としては、欧州議会および理事会による指令(EU)2018/957により指令96/71/ECが改正されている。かかる法改正について、EU圏内の研究者と意見交換を行うとともに、指令の翻訳と分析を進めた。平成30年度中に、具体的な研究成果の公表にまでは至らなかった。 3. 最後に、EU労働時間指令2003/88/ECについての研究を行った。国際的経済活動の自由と労働法との間の相克関係の調整方法としては、統一的労働法の形成も1つの手段となる。この点、EU労働時間法制がどこまで統一的に法規範を形成しており、どこまで加盟国に裁量を残しているのかは、かかる手段の有効性を探るうえで重要な前提知識となる。研究成果は、専門誌において論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、EU経済統合における国際的経済活動の自由と労働法との相克関係について、単著という形で研究成果を公表できたことは、前提的研究であるとはいえ、大きな進展といってよい。 また、本研究課題を進めるには広くEU労働法についての知見が必要とされるところ、EU労働時間法について知見を深められたことは、これも進展といってよい。 他方で、EUにおける越境的配置労働者指令の翻訳と分析は、参照している英語版とドイツ語版(いずれも公式版)の間での不一致の解明に時間がかかり、やや遅れ気味である。もっとも、EU圏内の研究者の協力があり既に解決しているため、次年度には研究成果を公表できる見込みである。 以上を総合すれば、おおむね順調に進展しているとの評価が妥当と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
EU法における労働者の国際移動の自由について、収集済みの文献および裁判例の分析を進める。 平成30年度に研究成果の公表まで至らなかったEUにおける越境的配置労働者指令の分析も含め、近時の関連立法の動向については、EU圏内の研究者の協力を得て研究を推進する予定である。具体的には、ドイツの研究者2名を招聘しワークショップを開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の海外からの研究者招聘のスケジュール調整の結果、航空券にかかる費用が想定よりも膨らんだため、今年度の海外出張を取りやめ、次年度の招聘計画に備えることとした。
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