研究課題/領域番号 |
18K12653
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
石田 信平 専修大学, 法務研究科, 教授 (20506513)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イギリス法 / 労働契約 / 労働者概念 / 使用者概念 |
研究実績の概要 |
2018年度は、本研究課題の研究計画にそくして、イギリス労働法のWorker概念に関する裁判例・審判例・学説について詳細な文献研究を行い、季刊労働法262号、263号(イギリス労働法のWorker概念(1)(2・完)に、本研究課題の核心的課題に関する研究成果を公表した。2019年度は、イギリス労働法の使用者概念について検討を進めた。同時に、労働者概念に関する新たな裁判例の展開をフォローした。 クラウドワークが進展する中において、クラウドワーカーの労働者性が問題となってきている。労働者概念を過度に拡張して、多くのクラウドワークに労働法が適用されれば、クラウドワークの増加が抑制される効果が生まれ、経済的効率性が阻害されてしまう。逆に、労働者概念が狭く設定されれば、クラウドワークの多くに労働法が適用されず、クラウドワークに対する保護が行き届かない。ブレア労働党政権以降、イギリス労働法では、労働者保護と市場の効率性を両立する政策が展開されてきたところであり、クラウドワークに対する労働法の適用に関する議論についても同様の傾向がみられる。2019年度は、前年度に公表した研究成果を踏まえて、クラウドワークに対する労働法の適用という問題意識に基づいた検討を進めた。 クラウドワークに対して労働法が適用されるという帰結が導かれるとしても、誰が労働法上の使用者責任を負うのかという問題がある。クラウドワークの使用者は誰か、という問題である。2019年度については、この使用者概念に関する検討も同時に進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に本研究課題の核心部分に関する研究成果を公表することができた。順調に本研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
イギリス労働法の全体動向をフォローしつつ、使用者概念に文献研究・裁判例の分析を進める。また、イギリス労働契約理論の新たな議論に関する検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に大学移籍が生じ、新たな勤務大学での研究設備準備のために2018年度末に前倒し請求を行った。そのため、2019年度の研究遂行に費用な経費が不足したため、2019年度についても前倒し請求を行った。
2020年度については、本来使用する予定であった使用額よりも少ない額での研究遂行を行う必要があるが、本研究課題の中心的な研究成果は既に公表済みであることに加えて、必要文献の購入も概ね行うことができているため、本研究の遂行に支障はない。
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