研究課題/領域番号 |
18K12655
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
竹川 俊也 北海道大学, 法学研究科, 特別研究員(PD) (40812194)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 責任能力 / 量刑 / 原因において自由な行為 / 自招性精神障害 / クレプトマニア / 累犯加重 / 前科 |
研究実績の概要 |
本研究は、アメリカおよびイギリス(イングランド・ウェールズ)刑法における自招酩酊に関する議論について、現地でのリサーチ等を通じて歴史的背景や理論的根拠を対象とした研究を行なうことにより、近時の実務で大きな問題となっている、自招性精神障害の刑事責任の判断枠組みを明らかにすることを目指すものである。 今年度も,昨年度に引き続き,自招性精神障害の刑法的評価の問題の研究に取り組んだ。このうち,昨年度は,自招精神障害をめぐる議論のうち,従来責任能力論の枠内で論じられていた問題(いわゆる「原因において自由な行為」論をめぐる議論)の分析に研究のエフォートの多くを割いたのに対し,今年度は,こうした精神障害が量刑に与える影響や,制御能力のみに影響を与える精神障害(クレプトマニアなど)と量刑の関係をめぐる議論を分析するための準備作業に取り組んだ。自招性精神障害と量刑の関係をめぐっては,「思いとどまる能力」(制御能力)が責任能力の実際の判断において重視されていないこととパラレルに,量刑の判断においても同様に解されるべきとの発想から,これに示唆を与えると考えられる前科加重の問題について分析を開始している。 これらの成果について,①第15回司法精神医学会大会におけるシンポジウム「『異質』と『同質』」のパネリスト報告(「刑法学における「異質」と「同質」-責任能力論を素材として」)を通じ,精神科医や法曹を中心とするオーディエンスと意見交換する機会を得たほか,②札幌法と心理研究会にて研究報告(「責任能力をめぐる諸問題」)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,上記「研究実績の概要」で述べたように,自招性精神障害の刑法上の判断枠組みを総論的に提示するための準備作業として,前科加重の問題など,当初の研究計画に含まれていなかった分野の議論を新たに参照する必要が生じたために,当初の計画よりも研究の進捗がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も,今年度に引き続き,関連分野の論文を網羅的に調査・収集・分析する。
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