研究課題/領域番号 |
18K12660
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
東條 明徳 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (40734744)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 実行の着手 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、全体として次の3段階を予定している。(a)不能犯論も実行の着手論も同じ危険概念の問題であるという伝統的理解を見直す。(b)実行の着手時点は危険以外に理論的にどのような要素によって画され得るかを検討する。(c)その検討結果を踏まえて、様々な犯罪類型において実行の着手時点はどのように画されるのか、具体的な判断基準を提示する。 このうち、(a)段階の研究については、本研究年度2年目までの研究により、当初の見通しどおり、伝統的理解には理由がないとの研究成果を得て、その成果の公表まで完了した。 研究年度3年目以降は(b)段階及び(c)段階の研究を進めた。研究年度4年目である令和3年度には、それまでの基礎研究に支えられた実行の着手論に関する基本的な考え方をベースに、裁判例の分析を相当数行い、本研究の最終目標である実行の着手判断の具体的基準につき、詳細な検討を行った((c)段階の研究に相当する)。 加えて、令和3年度には、この(c)段階の研究結果を国内向けに発信することをも進めた。具体的には、日本刑法学会第99回大会においてこの研究結果に関する個別報告を行ったうえで、同学会の学会誌において当該研究結果を発表した。さらに、本研究の進捗に合わせる形で、東京大学大学院法学政治学研究科の紀要(法学協会雑誌)において連載中であった研究論文「実行の着手論の再検討」の連載を、この研究結果の提示を以て完結させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、研究内容として上述の(a)(b)(c)の大きく3段階を予定しているうえ、その研究成果の国内外への発信をも目標としている。このうち、(a)~(c)の3段階の研究については、既に一定の成果を得ることができた。さらに、この成果の国内向けの発信もある程度行うことができたと考えている。しかし、国外向けの発信は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、その機会を得ることが全くかなわなかった。研究計画上は、令和3年度を以て国外発信まで終えて本研究課題を完了する予定であったが、この点につき、未だ十分に行えていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
上記の次第で、本研究課題の対象年度を1年延長し、(c)段階の研究についてさらに検討を加えて内容の精緻化を図るとともに、その研究成果を国外発信することに努める予定である。幸い、研究代表者は令和4年度はイタリアのフィレンツェ大学での在外研究を予定しており、ヨーロッパの各大学には人的にも物理的にもアクセスし易い環境にある。この環境下で、イタリア法の知見をも踏まえてさらに(c)段階の研究を進めるとともに、その成果をイタリアをはじめとするヨーロッパ諸国の刑法学者らと共有することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は当初予定していた研究の最終年度であり、研究成果を国外向けに発信するため海外出張費を多く計上していた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響でこうした機会を全く得ることができなかったため、計画との差額が生じた。 令和4年度にはフィレンツェ大学での在外研究を予定しており、ここを拠点としてヨーロッパの各大学へのアクセスの可能であるため、この環境を利用して国外発信の機会をつくり、主としてその際の出張旅費として助成金を使用する予定である。
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