研究課題/領域番号 |
18K12667
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松本 圭史 早稲田大学, 法学学術院, その他(招聘研究員) (20801103)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 刑法 / 共犯 / 従属性 / 連帯性 / 違法性 |
研究実績の概要 |
本研究は、正犯者に犯罪が成立するか否か、また、何罪が成立するかによって、共犯者に犯罪が成立するか否か、あるいは、何罪が成立するか否かが形式的に変わり得るとしてきた従来の共犯従属性原理について、ドイツ法およびオーストリア法も参照しながら、その理論的根拠を探究することを通じて、共犯の成否をより実質的に判断可能な従属性原理を確立することを目的とするものである。 初年度である2018年度においては、とりわけ、①正犯者に正当化事由が存在する場合に共犯者が処罰されるか否かを問題とする違法性の連帯性、および、②共犯者間において成立する罪名が一致すべきか否かを問題とする罪名従属性について研究を行った。 まず、①に関しては、正犯者に正当化事由が認められる場合に共犯者も適法とされる実質的な根拠は、共犯者は正犯者が実現した法益侵害(結果無価値)だけでなくそれを優越する法益保全(結果有価値)についても「因果性」を有するという点にある、としてきた私見のうち、構成要件段階と同様に違法性(阻却)段階においても結果との「因果性」が問題となるという上記私見の基本構想部分について、構成要件段階での解釈を違法性(阻却)段階に応用する日本およびドイツの解釈を手がかりに理論的な裏づけを行うことを試みた。 ②に関しては、共犯関係にある共犯者間で成立する罪名は異なっていてよいとする行為共同説と一定の限度で罪名が重なり合っていなければならないとする(部分的)犯罪共同説)について、日本の判例および学説を分析することで問題状況を整理するとともに、ドイツにおける「部分的共同正犯(teilweise Mittäterschaft)」および「独立した共同正犯(isolierte Mittäterschaft)」について分析を行った。 また、オーストリアにおける共犯理論の全体像についても調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、上記①に関して、従属性原理に関する自らの先行研究についてさらに理論的な裏づけを行うと同時に、上記②に関して、とりわけ日本法およびドイツ法の基本書から個別の論文に至るまで比較的網羅的に資料収集を行い、また、これと並行して文献を講読することで、問題状況を整理し、問題解決の方向性を具体化することができた。 オーストリア法については、個別の論文を十分に収集するには至っていないが、その準備段階として、共犯理論の全体像について調査を行うことができた。 このように、次年度以降の研究を円滑に遂行する環境を構築するという初年度の目標を十分に達成することができたといえ、本研究は「おおむね順調に進展している」ということができる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、上記②についてさらに調査を行い、研究会での報告ないし論文の執筆を行うことで成果を公表することを予定している。また、2020年度の活動を見越して、より広範に共犯従属性の問題について調査を行っていく。とりわけオーストリア法については、日本法ともドイツ法とも異なり統一的正犯体系を採用しているという特殊性があることから、日本法と比較可能な点を模索しながら、個別の論文について調査を行っていく。
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