研究課題/領域番号 |
18K12670
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宇野 瑛人 東北大学, 法学研究科, 准教授 (00734708)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 倒産手続開始要件 / 支払不能 / 否認権 |
研究実績の概要 |
研究課題について設定した小課題の一つである、倒産手続開始要件に関する検討を進め、論文の公表に入った(現在連載中)。同論文にかかる研究は、ドイツ法及びフランス法を素材として、日本法における手続開始要件の中核となる「支払不能」概念を検討するものであり、我が国における倒産手続の開始の条件(及び、開始の目的を貫徹するための諸制度の発動条件)を考察するに当たっての基礎を成す意義を有する。 ドイツ法やフランス法においては、この概念と内容的には比較的親しみのある概念を有している一方で、その機能が日本法と異なっていたり、あるいはより特定的であるという特徴がある。とりわけ、研究課題との関係では、我が国においては支払不能概念が破産手続との関係で捉えられてきた一方、当該外国では一定時期移行、(債務者財産の清算ではなく)再建を目的とする(あるいは、再建を目的として含む)手続の開始の条件を成すものとして捉えられてきており、日本法とは顕著に議論の方向性に違いがあることが分かる。そして、ドイツやフランスにおいて重要である(が、逆に日本においては十分には取り上げられていない)点として、手続の開始申立権を誰が有するのか、ということ、特に債務者以外の者が申立権を持つことによって債務者が被る不利益を如何なる条件があれば正当化できるのかという強い問題意識がある。 他方、このような違いがありながら、否認権の要件としては、日本・フランス・ドイツは共通して支払不能及びそれに類する概念を基準として持つ。我が国において「破産手続開始原因=否認の要件」という定式さえ唱えられることがあるところ、左辺の内容が日本と外国ではずれているにもかかわらず、右辺は共通している、という興味深い現象があることになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題の最終的な目標は、清算型手続を基礎にして発展してきた諸概念(支払不能もそうである)を、再建型手続との関係で改めて検討し直すことにあるところ、現在のところ、清算型手続との関係でこれまでの議論を整理し直し、その問題点を明らかにするという作業が大部分を占めている。これは、そもそも旧来の議論を新たな視点から眺めようという場合に、旧来の議論自体が容易に整理を許すものではなく、現状の正確な把握をまずはなさなければならない、ということに由来する。その為、執筆中の論文においても、まずは前提としての現状把握と問題の発見を重点的に行っており、その先の展開については、簡単に言及するものとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
既にとりかかっている小課題については、現状把握と問題の発見の段階を終えて、より具体的・発展的な検討に移ることを予定している。 また、未着手の小課題や、上記着手済み小課題の中で派生的に触れたにとどまる小課題については、順次本格的な検討を開始していく予定である。こちらでも、現状把握自体に時間を要する可能性はあるが、昨年度の経験を生かしてより効率的に研究を進めて行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の途中において、「若手研究における独立基盤形成支援(試行)」に基づく追加の交付決定を受けたところ、当該交付にかかる金額の一部が次年度使用額となるに至っている。その理由としては、第一に、当該交付にかかる追加支援額自体を、当初から事業年度全体にわたって順次使用していく予定であった(購入する物品には書籍が含まれ、法律という事柄の性質上、書籍が毎年アップデートされていくことが必要であるため)ことがある。第二に、前年度に購入予定であった物品や書籍についても、在庫切れや発売の延期があり入手が間に合わなかったことがある。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画としては、上記の通り当初から今年度に使用する予定であったものは予定通り使用することとし、前年度に購入ができなかった物品を今年度に調達することを予定している。翌年度請求分は、前期追加交付とは異なる使途(旅費等)に充てることを予定している。
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