研究課題/領域番号 |
18K12670
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宇野 瑛人 東北大学, 法学研究科, 准教授 (00734708)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 倒産法 / 債権者平等 |
研究実績の概要 |
2021年度は、主に倒産手続における担保権の取扱いを中心に研究を深めた。研究課題の設定において、「債権者平等」と「破産財団」ないし「再生債務者財産」を小テーマとして掲げていたところ、この両者双方に関わる問題として研究の対象となるものである。 倒産手続における担保権の中でも、特に近時、非典型担保なかんずく所有権留保が議論の厚い領域となりつつあることに鑑み、これを中心的な検討対象と据えた。こうした非典型担保の取扱いに際しては、その法形式を重視して所有権と同等の、つまり取戻権として取り扱うべきなのか、そうではなくて、倒産手続上一定の規制が存在する担保権と同等のものとして取り扱うべきなのかが伝統的に議論の対象となってきており、その結論において後者を採るべきことが学説上圧倒的多数を占める見解となりつつも、そのより具体的な意味、あるいはそのような結論を採るよる詳細な論理が問題となることが近時増えてきた。特に、再建型手続においては債務者の事業維持・再建の物的基盤として、「担保目的物」を利用する動機が強く、そこでは再建型特有の論理が援用されることもしばしばであった。 2021年度の本研究課題にかかる研究においては、こうした伝統的な議論に再び目を向けつつ、その論旨をより精密に検討することを試みた。結果、①これらの議論との関係では、再建型固有の論理よりもむしろ基礎となっている実体法の法律構成が重要であり、そのことは非典型担保をどのような性質の権利と倒産法上性質決定するかどうかとは無関係に妥当すること、②それと並んで、倒産法上特別の取扱いが想定される場合にはその趣旨と当該制度が実体法を変更している程度に照らして従前よりも詳細な検討を要すること、が導出できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、covid-19の流行もあって、特に上半期において研究の遅れが顕著であった。主に、出張等移動を伴う研究活動が中断されたこと、洋書の輸入が一時滞ったこと、所属研究機関における感染症対策それ自体が研究代表者の時間とエネルギーを食いとったこと、などが理由として挙げられる。 年度後半は、オンラインでの研究会参加等を利用しつつ、外国書籍の入手もそれなりの確実性でもって可能となったため、研究ペースを回復することが可能であったが、結果的には、従来想定していた3つの小課題の検討は完了しておらず、進捗はやや遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、事業年度の最終年度として、本研究課題にかかる研究成果の総括に向けて研究を進めていきたい。なお、やや当初の予定とは異なった形で、当初設定した小課題を検討することになった(小課題をそれぞれバラバラにではなく、複数の課題をまとめて取り扱う形になったことが大きな変更点である)が、却って、研究成果の総括にとっては良い傾向であるようにも思われる。 また、昨年度実施を試みたが、covid-19の流行によって頓挫したこととして、海外での研究・情報収集活動がある。2022年度も、依然として感染症の問題が残っている為、この実現が可能かどうかは今後の世相の推移を見守るほかないが、可能性がありそうであれば、こうした形態での研究の実施を試みたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額となっているのは、若手研究者に対する独立基盤形成支援にかかる未使用額である。この部分については、事業年度全体を通じて順次支出していく予定であったため、このような取扱いになっている。 また、前年度、海外での資料収集活動を断念したことから、今年度、同様の活動を試みたいと考えており、このことに充てる費用を確保しておく必要もあった為、このような扱いをした。
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