倒産手続における債務者財産の取扱いについて、破産財団ないし手続対象財産の範囲そのものを決定する規律と、かくして手続の対象となることとされた財産上に担保権が設定されている場合における当該財産の規律とを比較しつつ、倒産手続における財産の規律のあり方と、当該財産をめぐる債権者間の平等の規律のあり方を主として検討した。とりわけ、前年度の末から検討課題としてきた、これら2種類の規律の狭間にあると考えられる、非典型担保(所有権留保や譲渡担保、サブリース等)を検討の中心に据えた。 また、事業最終年度ではあるが、Covid-19の影響で延期していた在外研究に着手し、研究課題に関してフランスにおける最新の立法及び学説での議論状況の調査を行った。特に、フランスにおいては、近似2021年9月15日の2つのオルドナンス及び2022年2月14日法により倒産法に比較的大きな改正が施されており、これら改正を巡る最新の議論に触れることができた。前者との関係では、1985年以来「債務者の事業保護」の名の下にフランスにおいて強力に進められてきた倒産手続における担保権者の権利制限の在り方に対して、担保の有用性確保の観点から反省が迫られているとの認識が得られた。また、後者との関係では、個人事業者の倒産に際して、債務者財産を当然に分割して規律すると共に、早期の事業再開の為の特別財産を観念するという、倒産手続における債務者財産の取扱いについてフランスの文脈においては極めて革新的な規律が置かれるに至っており、今後の議論の展開に注目が必要である。 なお、これら調査結果については、帰国を待ってから公表作業を行う予定である。
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