研究課題/領域番号 |
18K12671
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
ROOTS MAIA 東北大学, 法学研究科, 准教授 (20754550)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 未成年者養子縁組 / 子の利益 / 継子養子縁組 / ステップファミリー / 親族養子 / 継親の法的地位 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、まず、日本の未成年者養子縁組、特に継子養子縁組及び親族養子縁組に関わる法における課題を洗い出し、この成果の一部を”Stepfamilies and the Law in Japan”, in: C. Rogerson et al(ed.), Family Law and Family Realitiesにおいてまとめた。 本研究は、ドイツ法及びイギリス法と日本法との比較研究であるが、平成30年度は主にドイツ法の研究を行った。当該研究において、継子養子縁組及び親族養子縁組の文脈での「子の福祉」の内容をめぐる解釈について、ドイツの学説及び裁判例の検討を進めた。ここでの最も重要な成果として、ドイツの学説及び裁判実務において、家族社会学等の分野の研究成果を参照した解釈がされてきたことを明らかにできた。更に、継子養子縁組及び親族養子縁組において、養親となる者と養子となる者の間に多くの場合親子関係の成立が期待できない等といった理由で、この二つの養子縁組の種類が養子制度の本来の理念に反するとの批判があることが分かった。 次に、ドイツ法において、継子養子縁組のオルターナティブとして継子と養子縁組をしない継親の法的地位の強化が図られ、継親のいわゆる小さい配慮等が用意されている。しかし、学説において、これらのオルターナティブではまだ不十分であるとの指摘があり、継親の小さい配慮の範囲の拡充等を求める声もあることが分かった。 ステップファミリーの支援団体や学者の活動により、日本において近年ステップファミリーの特徴等が徐々に認識され始めている。現行法が必ずしもステップファミリーのニーズに適切に応えていないということを、法律家の間により広く認識させ、また、比較法研究を手掛かりとしたより適切な規律を提案するところに、本研究の意義と重要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本法の問題の洗い出し及びドイツ法の文献研究を行った。ドイツ法については、文献研究において一定の研究を行うことができたことから、当初平成30年度に予定していたドイツでの資料収集等を行わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、ドイツ法の研究を進め、従来の文献の収集及び現地の研究者と意見交換をするため、ドイツでの調査も予定している。ドイツ法の研究がある程度まとまったら、イギリス法の研究を本格的に進めていく予定である。イギリスの現地調査は、令和元年度末か令和2年度初めに予定している。令和元年度半ばまでの研究成果について、2019年度12月にイスラエルにて行われる予定であるInternational Society of Family Law Regional Conference 2019 - Children's Rights and Interestsにおいて発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画においては、平成30年度は、ドイツ法の従来の文献の収集等をするためにドイツに渡航する予定でしたが、近年の展開である継子養子縁組のオルターナティブをめぐる研究を先に行ったため、日本において十分な資料収集を行うことができた。また、最終年度に集中して行う予定であった日本法の研究を、平成30年度に先に行ったが、そのための文献を日本国内の図書館等で入手できたため日本法の文献はそれほど購入しなかった。更には、先に日本法の研究を行ったため、当初昨年度に始める予定であったイギリス法にまた着手しておらず、イギリス法の書籍購入費等をまだ使用していない。 令和元年度に、ドイツでの資料収集や現地の学者との意見交換を行う予定である。又、イギリス法の研究に本格的に着手する予定である。したがって、文献購入、国外出張(ドイツの文献収集に加え、令和元年12月に開催されるISFLのイスラエル学会において、研究成果の一部を発表するる予定である)、国内主張のために、費用を利用する予定である。
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