研究課題/領域番号 |
18K12671
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
ROOTS MAIA 東北大学, 法学研究科, 准教授 (20754550)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 未成年者養子縁組 / 子の利益 / 継子養子縁組 / ステップファミリー / 親族養子 / 継親の法的地位 |
研究実績の概要 |
2019年の12月にテルアビブで行われたInternational Society of Family Lawの学会にて、日本法における継子養子縁組をめぐる課題について報告をした。具体的には、児童権利条約に照らし、子どもの立場から日本の継子養子縁組(及び未成年者の普通養子縁組一般)について検討し、継子養子縁組のオルターナティブの必要性について論じた。更には、現在の制度が人権法及び子の最善の利益の観点から多くの課題を抱えているにも関わらず、何が法改正を妨げているかについて検討し他国の研究者と意見交換を行った。 比較法研究では、主にイギリス法の研究を進めた。主に継子養子縁組や継親の権限をめぐる1970年代以降の法改正や方針の展開の経緯と背景について調べた。イギリス法においては、養子縁組をめぐる法制度ができた1920年代以降、継子養子縁組の在り方について議論が続いている。(特に実親が離婚した場合の)継子養子縁組が、養子法の本来の目的に合っていないことや別居実親が排除されること等に対する批判が続いた。法と裁判例が継子養子縁組に消極的となった1970年代の法改正の後に行われたMasson教授らの継子養子縁組に関する調査が、その後の議論と実務に対し大きな影響をもたらした。Massonらは、養子縁組の実務及び当事者の希望とステップファミリーの実態について調査・検討し、継子養子縁組や縁組をしない継親の法的地位について多くの課題と制度の不備を指摘し、改善のための提言をした。1970年代以降、ステップファミリーの実態に合うような制度の在り方についての検討が更に進み、特に養子縁組をしない継親による継子の監護養育権(その範囲や法的根拠等)について、実に多彩な提案がされ、法改正も行われた。このように、ステップファミリーの実態に目を向け、様々な法的対応を試みてきたイギリスから得られる示唆は多い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年3-4月に実施を予定していた実態調査(連れ子再婚をしようとしている者への行政の窓口対応の在り方について)は、新型コロナウイルスウイルス感染拡大のため延期とした。状況が落ち着いたら、令和2年度に実施したい。 同じく3月-4月に予定していたイギリスでの調査を、同じく新型コロナウイルスウイルス感染拡大のため延期した。そのため、イギリス法の研究が若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
イギリス法の研究:1.イギリスにおいて、継子養子縁組に関する法・方針が20世紀において何回か変わったことをもって、イギリスの裁判例がステップファミリーの子の利益をどのように解釈してきたか、その解釈がどのように変化してきたかを明らかにするために、イギリスの裁判例研究を続ける。2.親族養子については、当初ドイツ法を中心に比較研究を行う予定であったが、ドイツでの親族養子縁組の割合が少ないこと等をもって、比較法研究の重点をイギリス法にうつした。イギリスでは親族養子縁組をめぐる議論が以前から盛んであり、更には継子養子縁組と並べて(場合によっては対比しながら)の議論が行われており、日本法への有意義な示唆を得られると思われる。特に、未成年養子法の目的との整合性、養子縁組の動機、縁組手続きにおける「子の福祉」の考慮(誰がどの段階でどのように考慮しているかを含めて)、養子縁組の法的効果をめぐる議論に着目したい。 実態調査:新型コロナウイルス感染拡大の影響でいったん延期となった実態調査を、令和2年度に実施する予定である。 海外での資料収集:2019年度に延期となった海外での資料収集を、時間が許す限り実施したい。 比較法研究成果の整理:イギリス法の研究が終わったら、比較法研究の成果を整理と日本法への示唆を整理し、国内で報告する予定である。 海外での研究成果発表:当初は、2020年7月に開催される予定であった8th Congress on Family Law and Children’s Rights(国際学会、シンガポール開催)で、本研究の最終成果を報告することになっていたが、本大会の開催が新型コロナの影響で2021年までに延期となった。イギリス法からの示唆を加え、報告の内容を更に充実させていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため、実施予定であった海外での資料収集及び国内の実態調査が延期となったため、次年度使用額が生じた。2020年度に実施を予定している。
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