研究課題
若手研究
第一に,古法時代の委任契約につき,受任者の報告義務と委任者の償還義務とを検討し,委任事務における計算と危険の領域が観念されていることを示した。第二に,委任の引受けの無償性,受任者が支出した費用や被った損害についての委任者の填補義務などの基本的な論点につき,中世ローマ法からフランス民法まで,先行研究の要約と整理を行い,また史料解釈に若干の微修正も加えた。第三に,法人の意思表示をめぐり,これを代理論に還元しえない固有性をもった問題として探究する近時の研究の紹介と若干の批評を行った。
民法学
本研究は最終的に委任を中心的に検討するものとなったが,委任は,会社,不動産取引,保険,貿易,銀行取引,商品開発,親権,後見等々,社会に埋め込まれた多くの制度において使用ないし応用されている,社会の基幹を担う概念の一つである。そして,これらの諸制度が高度化するのに応じて,委任の概念も随時アップデートが求められる。それは学際的な作業でありうるが,概念を歴史的に検討することは,その重要な準備作業である。