本研究は、親権及び面会交流の課題について、法的親子関係の「内」「外」及び「周辺」という異なる角度から考察を行いつつ、最終的には総合的な観点から、親の離婚・再婚に直面した子の福祉の向上を図る制度を検討することを目的としたものである。
今年度は、親権に関しては、ドイツ法の研究を進めつつ、国内の法制審議会での離婚後の共同親権の議論状況に目を配り、ドイツ法の学説や裁判例の状況と照らし合わせながら、今後のあるべき方向性を検討した。秋に研究会で報告を行い、それをもとに論文をまとめることができた。一方、面会交流に関しては、判例の概観や判例評釈を執筆する過程で、離婚後のみならず、少し視野を広げて別居中のケースも考察の対象とした。
研究期間全体を通して、一時期は新型コロナウイルスの影響で、現地でのヒアリングなど当初の予定通りには進まなかった点も多々あった。そうした点は、文献研究でなるべく補うよう意識し、内容を大幅には変更することなく研究を終えられた。今回、ドイツの制度をみる中で、その法構造から推測される実態が次第に浮かび上がってきたため、今後はさらに、現地調査も十分に行い、わが国の将来の議論に資するような研究成果を提示できるように努めたい。
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