研究課題/領域番号 |
18K12675
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木原 彩夏 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (70807495)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 株主の権利行使 / 会社法 / 法令定款に従った会社経営を求める権利 / 株主の経営への参与 / 株主保護と企業利益とのバランス |
研究実績の概要 |
本研究は、法令定款に従った会社経営を求める株主の権利に基づいた、株主の経営への関与は、どの程度まで正当化されうるのか、を考察するものである。日独の比較法研究等の手法により、違法な会社の措置に対する株主の権利行使手段にはいかなるものがあるか、株主の保護のみならず会社の正当な利益の保護とのバランスを考えた上でそれらはどのように行使されるべきか、を明らかにすることが目的である。
研究の2年目である本年度においては、引き続き我が国における制度及びそれに関する議論について分析を進めた。その中で、我が国の制度に機能的に類似するドイツ法における制度に関する議論を参照した。また並行してドイツにおける決議の瑕疵法制に関する改正議論について文献の収集及び分析を行った。 これまでの研究の成果を、以下のように公表した。京都大学法学会の発行する法学論叢において、「合併差止めと株主の保護・合併実行の利益(三)~(六・完)」を公表した。これにより、これまで本研究で行ってきた研究の成果の一部をまとまった形で公表することができたといえよう。 また、京都大学商法研究会において新株発行の瑕疵があった場合において株主のとりうる手段についての判例研究報告を行った。この判例研究報告は、本研究が主に対象とする大規模公開会社についての判例・裁判例を対象とするものではないが、会社の規模による法制度の差異を問わずあてはまりうる気づきが得られたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目に当たる本年度は、法令定款に従った会社経営を求める株主の権利を基礎とする株主の権利行使手段と、その行使の限界について、ドイツにおける決議の瑕疵法制の改正に関する議論を比較法対象として分析する計画であった。本年度はこの当初の計画にしたがって研究を遂行するほか、新株発行の瑕疵があった場合において株主のとりうる手段についての判例研究を行った。この判例研究は、閉鎖会社においてのものであり、これまで研究対象としてきた大規模公開会社が対象のものではないが、会社側または経営陣側が故意に株主の権利行使を妨げた場合には、株主にとって違法な会社の措置を是正する手段が失われかねないことを示唆する裁判例を対象とする研究であった。この示唆は、本研究が主に対象としている大規模公開会社においてもあてはまりうるものであると考えられるため、本研究の進展において有益な気づきを得られたと言えよう。
ドイツの議論についての分析は当初の計画からすれば若干の遅れが見られるが、来年度以降にその遅れを取り戻せると考えられる程度のものである。これに加え、本年度は、これまでの研究の成果を一通りまとめたものを公表することができた(後述の研究成果を参照)ため、研究の進捗状況としては「おおむね順調に進展している」にあたると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に一定程度の進捗が見られたドイツにおける決議の瑕疵法制の改正に関する議論について分析を進め、我が国における制度への示唆となるべき知見を引き出す。また、我が国における令和元年改正会社法に関し、本研究テーマと関連する場面について考察をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨今の新型コロナウィルス発生により、予定していた研究会・学会が中止となったこと等による。今後、状況が収まり次第再開される研究会・学会に積極的に参加し、研究課題に係る情報収集につとめるほか、資料収集によりその間の遅れを取り戻す努力をする予定である。
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