研究課題/領域番号 |
18K12678
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
行岡 睦彦 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (20734693)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社債 / 事業再生 |
研究実績の概要 |
本研究は、事業再生における社債のリストラクチャリングに際して、社債権者の意思決定を規律する法的仕組みがいかにあるべきかを理論的に検討するものである。本年度の研究実績の概要は、以下のとおりである。 まず、社債権者の意思決定の仕組みとして、元本・利息等の核心的契約条項の変更を社債権者の資本多数決(社債権者集会)で決することの意義と限界を分析した。日本、アメリカ、ドイツにおける制度の変遷と背景を分析することを通じて、多数の債権者が存在する社債における資本多数決制度には、社債権者の個別的同意による仕組みに内在する意思決定の歪みの問題(フリーライド問題と強圧性問題)を同時に克服しうるという点に重要な利点を見出しうることを明らかにした。研究成果の一部を日本私法学会の個別報告で公表した。 また、このような研究を進める中で、意思決定の仕組みそれ自体のみならず、それに先立つ交渉プロセスにも注意を払うべきことが明らかとなった。このような問題意識から、社債の管理のあり方について、イギリス・アメリカの制度および実務を参照しながら検討した。交渉においては社債契約上のコベナンツが一定の役割を果たしうること、そして、これを多数の社債権者に代わって一元的に管理する主体(社債管理機関)の存在が重要となりうることを示した。交渉プロセスに関する研究の一環として、権利の優先順位を定めるルールが事業再生局面における交渉のあり方にどのような影響を与えるのかにつき、アメリカの連邦倒産法第11章(いわゆるChapter 11)を素材として検討した。これらの研究成果の一部を論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主たる研究対象についての調査・分析を進めて研究成果を公表するとともに、それに付随して検討されるべき課題を明確化することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果により、社債のリストラクチャリングを検討するにあたっては、意思決定の仕組みはもちろんのこと、意思決定に先立つ交渉局面や、社債契約の内容にも注意を払う必要があることが明らかとなった。今後は、事業再生局面を念頭に置きつつ、社債の管理および契約設計に焦点を当てた研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
外国図書の購入を予定していたが、今年度中に入手できなかったため、次年度に繰り越した。
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