研究実績の概要 |
令和3年度は主に、米国における固定主義の意義というテーマを、特に同国における倒産手続き開始後に発生する担保物(プロシーズ)の取扱いという方向から掘り下げる研究を行った。その結果、①同国においてもプロシーズの範囲が問題となり、連邦倒産法552条が定めるプロシーズの範囲を広範に解釈すれば担保権者を利する一方、無担保債権者を害しかねないこと、しかしながら②同国の裁判所は解釈論によりプロシーズを制限していること、また③連邦倒産法506条(c)に基づき、破産手続の遂行に伴う諸経費を担保権に優先して支払うことを認めるということによって、担保権者の権利を制限していることを明らかにした。 そして、特に①については、日本においても現在担保法制の改正中であり、担保権者がより広範に担保権を設定する方法(いわゆる包括担保ないし事業担保)について議論されていることから、アメリカと同一の問題がこれから生じる可能性があるところ、それに対する解決策として、②のように裁判所が担保権の範囲を制限するという方法のほか、③のように一定費用を担保権に優先する方法も重要である旨を論じてきた。 以上の研究成果については、拙稿「Melissa B. Jacoby & Edward J. Janger, Tracing Equity: Realizing and Allocating Value in Chapter 11, 96 Tex. L. Rev. 673 (2018)」において、アメリカの議論を紹介する形で一部明らかにしている。また令和3年11月には関西民事訴訟法研究会で報告の機会があり、上記のテーマで報告を行った。同研究会では、アメリカ倒産法研究の第一人者である大阪大学の藤本利一教授をはじめとする多くの教授からのご質問・ご助言をいただいた。
|