研究課題/領域番号 |
18K12693
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
カライスコス アントニオス 京都大学, 法学研究科, 准教授 (60453982)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 不公正な取引方法 / オンライン取引 / オンライン・プラットフォーム / データと消費者保護 / 民法改正 / ヨーロッパ私法 / 広告規制 / 消費者取引 |
研究実績の概要 |
本研究では、不公正な取引方法を包括的に規律する立法の可能性について検討することを目的としている。初年度である平成30年度は、主に、不公正取引方法規制に関する問題点等の整理を行うことに努めた。その際、日本における状況および比較法的研究の対象としているヨーロッパ私法について課題の選別等を行った。本年度(令和元年度)は、この作業を継続しつつ、関連する周辺的な領域にも拡大した。そして、これまでの作業についての一応のとりまとめを行った。 とりまとめとしては、不公正な取引方法と私法理論について、EU法を比較法的考察の材料としつつ、日本法のあるべき姿についても検討する書籍(単著)を出版した。同著は、本年度および昨年度の研究の一部をまとめた上で新たな分析を追加したものである。本年度執筆した関連論文についても、これを基礎としつつより広範にかつ深く考察した上で同著の一部とした。 本研究に関連する周辺的な領域のうちの主なものとしては、オンライン取引(オンライン・プラットフォームを経由するものを含む)およびデータの取扱いにおける消費者保護が挙げられる。いずれについても、主にEUにおける最新の展開に焦点を当てた論文や翻訳を公表した。また、広く私法理論を対象とする本研究の基盤的な作業として、改正民法や契約交渉に関する論文や最新の判例に関する評釈を執筆した。 本年度も引き続き、研究成果を海外に発信することに努めた。前述した周辺的領域のうち、オンライン・プラットフォーム規制についてはマレーシアで講演を行ったほか、ウルグアイで開催された国際会合でペーパーを提出し代読してもらう形で報告した。また、基盤的考察としての改正民法の在り方についてはオーストラリアで共同報告を行い、ポーランドの学生に向けたオンライン講義を行った。これらのほか、ヨーロッパやアジアにおける民法の在り方に関する韓国の大会でコメントを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したように、不公正取引方法と私法理論に関する研究を継続しその成果の一部を日本語や英語で国内外に発信することができている。中でも特に重要であると思われるのが、これまでの研究の一応のとりまとめを行い、書籍(単著)として出版できたことである。これらの理由から、本研究課題はおおむね順調に進展している考えている。 本年度行った研究を通して、不公正取引と私法理論の関係に関する基本的な考察を行った上でこれをより深め、さらに周辺的な領域にも拡大することができた。今後は、本研究の内容をさらに充実させるために、周辺的な領域を対象とする各論的考察を継続する予定である。前述した書籍はこれまでの研究成果の一部を公表するものに過ぎないため、引き続き国内外での論文の公表や報告を通じて積極的に研究成果を発信する予定である。 本年度も、昨年度同様に、国内外での資料収集や研究者との意見交換・情報交換を行い、そこから得られた情報等を本研究に役立てることができた。コロナの影響を受け、海外での資料収集や意見交換・情報交換を当初の予定通りに行うことができなかったことが非常に残念である。その反面、オンラインでの資料収集や意見交換・情報交換のためのネットワークを構築することができ、今後、これを活用して比較法的考察に係る作業をさらに充実したものとする予定である。 以上の理由から、研究成果の公表、研究作業の遂行、および今後の研究の継続のいずれの面からも、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前2年度と同様に、国内外の資料の収集と文献調査、そして研究者との意見交換や情報交換を行う。 より具体的には、本研究をより周辺的な領域に拡大して考察を深める予定であることから、オンライン・プラットフォーム規制やオンライン取引、さらにはシェアリング・エコノミーにおける不公正な取引方法の規制や消費者保護全般に関する書籍等を購入し、関連する文献や資料の収集を行う予定である。これらのテーマの一部については、国内での学会報告や日本語および英語での論文執筆を行うことを計画している。また、前述したように、コロナの影響により海外に渡航して報告を行うことが困難となっているが、オンラインでの国際会合への参加、報告や意見交換等を行う予定である。 ほかにも、前2年度に取り組んできた課題である不公正取引方法と消費者市民社会、および消費者市民社会の要素として位置づけられるエシカル消費、消費者教育やSDGsとの関係に関する研究も継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により、2019年度中に行うことを予定していた海外出張(海外での資料収集および共同研究)が延期されたため。 前記海外調査は、コロナの影響がおさまり次第、当初の内容に適宜変更を加えて行う予定である。
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