医師の裁量と患者の自己決定の関係について明らかにすることが本研究の目的である。そこで、本研究は、診療の方針決定において患者が何らかの希望を有している場合に着目し、この希望と医師の専門的知識に基づく判断とがどのような関係にあるかを、患者の自己決定と医師の説明義務に関する最高裁判決や、悪性腫瘍の治療方針に関する下級審裁判例を参照しつつ考察した。 その結果、①医師の専門的判断や診断が一定程度尊重されること、②患者の希望は、医師の説明義務を発生させ得ること、③悪性腫瘍の療法決定に際しては、裁判所がややパターナリスティックな判断をしていることを明らかにした。
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