研究課題/領域番号 |
18K12697
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
関 智弘 熊本県立大学, 総合管理学部, 講師 (60796192)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 政策実施 / 生活保護政策 / 保育政策 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、生活保護政策を対象として、政策設計者がいかなる意図を持って政策の実施主体を選択しているのか、そして実施主体の違いによって政策帰結がどのように異なるのかを明らかにすることである。厚生省(厚生労働省)の政策形成過程と自治体の政策実施過程をそれぞれ分析したうえで、両者の接合を図ることを目指している。本年度は、コロナの影響によって、いずれの研究も停滞することになった。前者の研究では、国立国会図書館などで資料調査を行う必要があるが、所属組織の方針で県外への出張ができなかった。また、後者の研究では、コロナ対応に追われる自治体との交渉がなかなか進まなかった。しかしながら、昨年度からの粘り強い交渉によって、自治体からケースワーカーの個人データを一部入手することに成功した。 本年度の主な成果は以下の通りである。第一に、自治体の福祉政策の仕組みと実態をまとめた内容を、共著の教科書の一章として刊行した。保育政策、生活保護政策、介護保険などを取り上げ、生活保護政策と他の福祉政策の共通点と相違点を検討した。第二に、共著論文において、保育士が経験する理想と現実のギャップが離職につながる可能性を実証的に明らかにした。保育士と同様に、ケースワーカーもバーンアウトや離職が問題になっており、生活保護政策の実施過程への示唆が大きい。第三に、日本政治学会の共同報告において、行政組織の構造が構成員の意思決定にどのような影響を与えるのかを、実験アプローチによって検証した。近年の研究では、行政組織の特徴が政策実施のパフォーマンスに関係していることが指摘されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、コロナの影響によって、研究計画の遂行にやや遅れが出た。県外出張が禁止されたこと、交渉相手の自治体の担当課が多忙であったことにより、研究計画を予定通り進めることができなかった。現地での資料収集や自治体担当者へのインタビューは実施できなかった。しかし、昨年度からの粘り強い交渉によって、ケースワーカーの個人データを一部入手することができた。コロナと関係のない先行研究の整理は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、研究計画の成果物を公表する。第一に、レビュー論文において、これまでの先行研究を整理して、政策実施研究の到達点と残された課題をまとめる。それにより、本研究の理論的な背景を明らかにする。第二に、自治体から提供されたケースワーカーのデータを分析し、その知見を学術論文として投稿する。自治体との交渉を継続し、生活保護の業務データを入手することを目指す。第3に、県外出張が可能になった場合には、収集済みの資料と現地調査の結果を踏まえて、厚生省と自治体の事例分析を行う。可能であれば、オンラインでのインタビュー調査なども検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じたのは、コロナの影響で現地調査を実施できなかったからである。本年度も現地調査が難しい可能性があるが、その場合はケースワーカーへのアンケート調査などで科研費を使用する予定である。
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