研究課題/領域番号 |
18K12698
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小松崎 俊作 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70456143)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会イノベーション / 公共政策 / 政策デザイン / 官民連携 / 規制緩和 |
研究実績の概要 |
本研究では,国内外の事例分析に基づき,社会イノベーションに貢献する公共政策の特定と類型化,各類型と地域活性化事業過程に及ぼす影響との関係のモデル化を目的とする.類型化を行う基礎的情報として,本研究ではまず具体的な社会イノベーションを対象とした事例研究を実施して,対象事例において公共政策が果たした役割を明らかにすることとした. 平成30年度は,官民が連携する環境を整備するメカニズムの例として,スペイン・マドリッドにおける都市計画(特に2003年に始まった首都高速道路M-30の地下化事業以降)に着目した.マドリッドにおいて有識者8名へのインタビュー調査を行い,文献の収集を行って,都市計画の形成・実施過程を明らかにしつつある.都心再開発において,官が物理的な空間を整備し,民が魅力的なサービスを生み出す,あるいは特に大企業が官の戦略と軌を一にして土地を提供したり移転したりするといった流れが観察されている. 官が戦略的に管理を弱めることで,民の自由度を向上させるメカニズムの例としては,広島(京橋川)・東京(渋谷)・大阪(道頓堀川)における河川敷地利用の規制緩和に着目した.広島市5名,渋谷区2名,大阪市2名,その他有識者4名へのインタビュー調査と文献調査を行い, 広島市の先駆的事業の形成過程,その他地域における規制緩和の影響過程を明らかにした.特に,渋谷駅周辺の再開発では,規制緩和や都市再生緊急整備地域への指定が,民間事業者の積極的参入につながったことが推定された. 地方分権等,官の戦略的キャパシティ低下によって民の創造性を発揮する自由度が生まれるメカニズムについては,イギリスの都市再生事業とドイツの再生可能エネルギーによる地域電力システムについての文献調査を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初平成31年度の研究計画に掲げた内容のうち,仮説として挙げた3つの類型案のうち1つについては日本国内で適した事例を発掘して調査・分析を進めることができた.また,もう1つについても,スペイン・マドリッドの事例について調査を進展させることができている.残る1つについては,文献調査に基づく事例の発掘にとどまっているが,おおむね順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,社会イノベーションに貢献する公共政策の類型化(仮説検証も兼ねる)に向けて,具体的事例の政治過程,公共政策の影響メカニズムについての情報収集が肝要である.特に,具体的事例が発掘できていない類型については,別事例の研究過程で地方分権が高度に進展していることがわかったスペインにおいて,高度な自治の下,バスク地方等で見られる先駆的事例(地域電力システムや都市交通システム等)を対象として事例調査を実施することが,研究推進につながると考えている.同じく,官民の連携環境整備という類型についても,マドリッドの事例にとどまらず,文献によって豊富な情報が手に入る(広義の)PPP事例を調査する.具体的には,各国で見られる「PPP法」の成立による影響や,我が国における指定管理者制度の影響などが対象となる. また,仮説で挙げた3類型以外の類型が存在する可能性を踏まえ,具体的な公共政策をあえて念頭に置かず,社会イノベーションの事例を数多く発掘して,その推進メカニズムに公共政策の影響があるか確認するという研究も実施する計画である.このために,社会イノベーション創出のために既存事例の収集を行っている組織(たとえば,各国のビジネススクールにおけるケース,日本のi.schoolにおけるアナロジーワークショップ素材等)から,情報収集を行う.
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