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2020 年度 実施状況報告書

自治体政策の実施過程における「家族単位モデル」バイアスの検証

研究課題

研究課題/領域番号 18K12700
研究機関名古屋大学

研究代表者

荒見 玲子  名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (20610330)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード地域共生社会 / 子どもの居場所支援 / 世帯 / 日本型福祉社会 / 広域避難者支援 / 世帯・戸籍 / 家族単位 / ジェンダー
研究実績の概要

2020年度は研究計画の3年目で、一番集中して取り組む予定であったが、新型コロナウィルス感染症への対応で、自治体への聞き取り調査や、アンケート調査が一切実現不可能になってしまったので、ほとんど科研申請時の研究計画に基づいた調査研究をすすめることはできなかった。そのため、2019年度までに調査を行った資料調査や事例の検討や公表に注力した。大きく分けると、第一に、地域共生社会政策、子どもの居場所支援、広域避難者支援にかかわる政策についての自治体レベルでの政策執行において、「家族単位モデル」がどのように影響雄与えているのかを検討し、関連した報告書・論文を公表した。いずれも、世帯単位での社会政策が行われることで、家族関係をより複雑化し、支援の難しさが生じていることが明らかになった。第二に、国レベルでもともとは完全に分離し、個別に体系を形作ってきた児童福祉政策と教育政策の政策編制がどのように接近し、きたのかを歴史的に明らかにする論考を寄稿・公表し、そのなかでも1980年代以降の日本型福祉国家(日本型福祉社会論)により「家族単位」の発想から生じる公と私における役割分担の結果、2000年代以降、リソースの食い合いが生じ、境界が不明瞭になっているだけでなく、子どもに対する責任・保障がむしろ後退している状況を明らかにした。第三に、児童福祉政策だけでなく、日本の社会政策全体の特徴について、福祉国家論から自治体の政策実施過程まで検討した英語のレビュー論文を執筆し、執筆過程のなかで、比較の視点から日本の社会政策における「家族」の位置づけについて再確認することができた。いずれも、結果的には、研究計画の①国際比較の中での「家族単位モデル」の機能・逆機能②2000年代以降の家族単位モデルの制度上の機能・逆機能の歴史的解明、③自治体政策実施過程での家族単位モデルバイアスの影響の検討を結果的に実現できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度に計画していたアンケート調査とインタビュー調査が一切できなかったので、その点では大幅に研究計画は遅れている。しかし、今年度は2018年度、2019年度に行った調査等の検討と公表ができ、研究計画の①国際比較の中での「家族単位モデル」の機能・逆機能②2000年代以降の家族単位モデルの制度上の機能・逆機能の歴史的解明、③自治体政策実施過程での家族単位モデルバイアスの影響の検討を結果的に実現できた。まだ十分な検討ではないし、知見はまだ断片的ではあるが、研究全体で見ると。「やや遅れている」程度にとどまったと考えられる。

今後の研究の推進方策

2021年度に入っても新型コロナウィルス感染症の広がりにより、2020年度と同じように自治体職員への調査がアンケート調査もインタビュー調査も難しい状況にある。特に、本研究が対象にしている保健福祉系の職員たちは、新型コロナウィルス感染症による自治体対応にかかわって大きな影響をうけており、現時点では、最終年度の2021年度も状況の改善は見込めない可能性がある。そのため、研究費を繰り越して2022年度に調査等を延長するか、研究計画の変更を検討しており、今年度前半にはその判断をしたいと考えている。また、研究期間の延長等にかかわらず、新型コロナウィルス感染症に関わる自治体対応について、特定定額給付金給付やワクチン接種にかかわる自治体対応など、行政給付における世帯単位モデルの影響を明らかにする良い事例があるため、2次データを中心に検討しながら、こうした問題について検討を重ねることができるのではないかと考えており、もし今年度調査が難しければ柔軟に対応し、こちらを重点的に検討をすすめる予定である。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染症の蔓延により、研究計画にあり、経費(旅費・人件費・その他)の使用予定であったインタビュー調査やアンケート調査の実施が不可能だったため、必要な金額をほとんど残した。そのかわり、研究業績の公表に必要な書籍を多く購入し、オンライン対応で故障したPCを買い替え物品費を使用した。2021年度もこの状況が続き、調査がほとんどできなければこのまま調査に関わる経費は使用しないで繰越を行うか、不本意ながらも研究計画を大幅に変更し、別の使用計画をたて、書籍や資料の収集、分析に経費(物品費、人件費等)をあてる予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うちオープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] 子どもの居場所支援の提供体制にかかわる政策学的検討―千歳市子育て総合支援センター及び都城市のみらい創造舎・らしくサポートの取り組み―2021

    • 著者名/発表者名
      荒見玲子
    • 雑誌名

      琉球大学地域連携推進機構生涯学習推進部門 研究紀要『生涯学習フォーラム』

      巻: 3・4 ページ: 51-70

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「制度の狭間」問題の解消・多機関連携・冗長性(3・完)―共生社会型・地域包括ケアシステム構築の事例から―2021

    • 著者名/発表者名
      荒見玲子
    • 雑誌名

      名古屋大学法政論集

      巻: 289 ページ: 131 - 156

    • DOI

      10.18999/nujlp.289.4

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「制度の狭間」問題の解消・多機関連携・冗長性(2)―共生社会型・地域包括ケアシステム構築の事例から―2020

    • 著者名/発表者名
      荒見玲子
    • 雑誌名

      名古屋大学法政論集

      巻: 288 ページ: 21 - 54

    • DOI

      10.18999/nujlp.288.1

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「制度の狭間」問題の解消・多機関連携・冗長性(1)―共生社会型・地域包括ケアシステム構築の事例から―2020

    • 著者名/発表者名
      荒見玲子
    • 雑誌名

      名古屋大学法政論集

      巻: 286 ページ: 49 - 68

    • DOI

      10.18999/nujlp.286.4

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 教育学研究と行政学研究―『日本型公教育の検討』執筆に加わって2020

    • 著者名/発表者名
      荒見玲子
    • 学会等名
      日本教育政策学会会員企画研究会
    • 招待講演
  • [図書] Social Policy and Administration in Japan, Farazmand A. (eds) Global Encyclopedia of Public Administration, Public Policy, and Governance2021

    • 著者名/発表者名
      Reiko Arami
    • 総ページ数
      ???(オンライン出版)
    • 出版者
      Springer, Cham
    • ISBN
      978-3-319-31816-5
  • [図書] SocOrganizational Theory in Japan, Farazmand A. (eds) Global Encyclopedia of Public Administration, Public Policy, and Governance2021

    • 著者名/発表者名
      Reiko Arami
    • 総ページ数
      ???(オンライン出版)
    • 出版者
      Springer, Cham
    • ISBN
      978-3-319-31816-5
  • [図書] 第2章第2節 市町村ヒアリングより明らかになった当事者参加型の広域避難者支援をめぐる多機関連携, 一人ひとりの暮らしに寄り添って―愛知県被災者支援センター10年のまとめ2021

    • 著者名/発表者名
      荒見玲子
    • 総ページ数
      172
    • 出版者
      愛知県被災者支援センター、認定NPO法人レスキューストックヤード
  • [図書] 第8章:教育と児童福祉の境界変容、大桃敏行・背戸博史編『日本型公教育の再検討―自由,保障,責任から考える』2020

    • 著者名/発表者名
      荒見玲子
    • 総ページ数
      240
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784000614122

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公開日: 2021-12-27  

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