研究課題/領域番号 |
18K12702
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
茅根 由佳 筑波大学, 人文社会系, 助教 (70772804)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インドネシア / イスラーム / 大統領選挙 / ソーシャルメディア |
研究実績の概要 |
本研究は、新興民主主義国家インドネシアにおける排他的勢力台頭の要因とその影響力拡大の戦略を解明することを目的としている。 2019年度は、共編著(日本語1)、単著論文(日本語2、英語1)、共著論文(英語1)を発表した。まず、単著論文では、民主化後に台頭したインドネシアにおけるシーア派排斥運動に関して考察を行った。具体的には、これまで「穏健」と形容されてきたインドネシア最大のイスラーム大衆組織であるナフダトゥル・ウラマー(通称NU)において、なぜ、シーア派排斥を訴える勢力が台頭したのか、その要因を明らかにするため、彼らの思想的ルーツおよび組織内の権力闘争の展開について分析した。 次に、共著論文では、宗教的少数派であり迫害の対象となってきたシーア派を支援する穏健派勢力の活動の実態と全国的ネットワークについて現地調査を行い、考察を深めた。同論文では、穏健派勢力が協力関係を強める現ジョコ・ウィドド政権の役割にも注目しつつ、インドネシアの市民社会に根付くグラスルーツの多元主義とその可能性について展望した。 最後に、2019年大統領選挙においてソーシャルメディアを駆使して台頭したイスラーム主義指導者に関する単著論文も発表した。彼らはNUの反穏健派勢力と結びつき、現職の対立候補であるプラボウォを担いだ野党陣営の支持動員に貢献した。これにより、大統領選挙を軸に国政レベルに展開されるようになった反穏健派勢力のネットワークについても考察を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究を進めるプロセスにおいて当初の計画以上にネットワークが広がり、数多くの情報を得られたことで、分析の視野も想定以上に広げることができた。 また、2019年にはインドネシアの重要な政治イベントである大統領選挙・総選挙が実施されたため、現実の政治においても多くの変化が見られた。 2018年度の研究成果を踏まえて、これらの変化について考察したことで多くの研究成果を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はこれまでの研究成果をまとめ、歴史的考察を加えたうえで、インドネシアにおけるイスラームと民主主義をテーマに単行本を執筆する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析対象であるイスラーム勢力が大統領選挙において予想外の顕著な動員力を見せ、選挙後も分極化の状況が継続したことから、10月の政権発足後の効果を段階的に観測するため、当初予定していた夏季の調査実施を見送った。そのため、未使用が生じた。未使用額は次年度に行う海外調査用に充てる予定である。
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