研究課題/領域番号 |
18K12703
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
太田 響子 愛媛大学, 法文学部, 講師 (60723963)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 危機管理 / 調整 / セクショナリズム |
研究実績の概要 |
本年度は、平時と緊急時の調整概念の理論上の整理を行った。特に防災計画や国民保護計画、BCP(事業継続計画)の策定が、平時の計画行政と質的にどのように異なるのか、平時における調整と緊急時の調整といった概念は理論上どのように異なるのか、といった点も視野に入れ、海外の事例も踏まえながら調査・分析を行った。特に、行政学における調整概念をめぐる論点整理においては、セクショナリズムや総合調整、人事や財政、政策形成過程における意思決定といった従来の議論に加え、予測不可能性やリスク評価についての新たな知見も加えて整理を行った。また、1990年代以降の内閣機能の強化および省庁再編についての既存研究をふまえ、部局レベルにおける危機管理・緊急事態対処のための連携・調整や組織再編の近年の状況について、内閣官房、内閣府防災、東京消防庁、地方公共団体等の諸機関の間の関係等を調査した。加えて、日本の官僚制における割拠性が戦後のいくつかの「緊急事態」に際して実際どのような対応をしてきたのか調査を進め、また対応の成否を分ける要因やボトルネックの分析を進めた。 また海外の動向については、イギリスやアメリカにおける近年の危機管理に関する制度変化を調査し、政府全体アプローチやリスクベースの危機管理、あるいはオリンピック等の大規模イベントへの対応等について明らかにした。 本年度の主な成果として、これらの先行研究の整理に基づいた平時と緊急時の調整概念の相違について、来年度以降の実証的な研究の前提となる理論枠組みを整理し、行政学およびリスク研究分野の研究会で複数回の研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究の初年度として、過去に研究代表者が行ってきた危機管理政策およびレジリエンス分析に関する研究プロジェクトの成果を整理し、さらに主に先行研究分析をベースに危機管理行政における調整についての理論研究を実施した。またこれらの成果を複数の研究会にて報告し、行政学、地方自治、リスク研究等の分野の研究者からフィードバックを受け、次年度以降のより実証的な研究に向けた理論枠組みを明確にすることができた。また行政学における調整という観点からは、研究代表者の過去の福祉政策分野における調整研究の成果を、日本行政学会の年次大会にて報告した。 また本年度は、研究者のネットワークを国内外に拡大することにも努めた。これまでの東京・関東地域を中心としたネットワークに加え、新たに関西地域の研究者を中心とする行政学・政治学分野の研究会に加入するとともに、オランダの研究者グループと先進諸国の行政運営の国際比較を行う研究ネットワークに参加した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、中央政府レベルの分析に加え、大規模な緊急事態における中央省庁の体制と地方自治体(市町村、都道府県)の間の調整について、複数の先進自治体および研究代表者が現在拠点としている愛媛県(原発立地自治体であり、また南海トラフ地震の際には後方支援自治体となる可能性が高い)の実態を研究する。また、本年度十分に実施できなかった歴史的研究、すなわち過去の日本の行政組織が実際に行った緊急事態対処の調査を継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入等の端数として残額が僅かに生じた。 次年度に物品の購入費として使用する予定である。
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