政府資源が有限であるなかで、多様なリスクや脅威から最終的に市民を保護する政府の役割・機能はどうあるべきか。こうした問題関心の下に、本研究は、効果的な危機管理体制の制度設計を検討するうえで不可欠な、緊急時の初動対応における中央政府と地方自治体間、あるいは各行政組織間の調整の実態を研究対象とする。 本研究では、これまで、国の省庁や自治体によって策定される防災計画、災害対応マニュアル等の行政文書の分析、東日本大震災時の各行政機関の初動対応、さらにイギリス等海外の危機管理体制の事例も参照しながら、理論面の整理を進めるとともに、行政実務の柱となっている行政計画に基づく政策実施に着目し、その研究の系譜においては特段注目されてこなかった危機管理に関する各種の計画を改めて位置づけなおす、という取り組みを進めた。本年度は、昨年度調査を行った愛媛県に加え、静岡県、高知県の危機管理計画・マニュアル・指針等のデータ収集と類型化を行うとともに、愛媛県、三重県、高知県へのヒアリングを実施した。また、具体的な災害対応業務について各県がいかなる計画等を整備し、それらに特徴や違いが生じているかを明らかにするため、各県の災害時広域避難に関する計画等の比較分析を行うとともに、これらの研究成果を論文や報告書等で公表する予定である。 本年度も引き続き新型コロナ感染症の影響で出張・現地調査等の機会が限られたが、そうした中でもオンラインヒアリング等を活用し、可能な限り行政実務の実態把握を試みた。今後の研究においては、オンラインで入手可能なデータ等に基づく分析に加え、より体系的な現地調査等の実施により、詳細な計画策定過程・運用実態の調査分析を進める計画である。
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