研究課題/領域番号 |
18K12705
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
荒井 紀一郎 中央大学, 総合政策学部, 准教授 (80548157)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 政治的分極化 / 実験政治学 / 政策選好 / 投票行動 / 政治心理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、市民の政治的価値観がどのように形成され、また変容していくのかを実験や調査によって明らかにしていくことにある。当初の研究期間は2020年度までであり、昨年度1年間期間を延長したものの、ラボ実験が実施可能となったのが年度末となってしまい計画していた実験の一部は実施することができなかった。このため、研究期間を再度1年間延長し、2022年度を最終年度とすることとした。 上述した制約の中で今年度は以下2つの研究を重点的に進めた。第1に、インターネットを通じた選択実験を実施し、選択肢の数が有権者の政策選好に与える効果の分析をおこなった。政策の種類と政党の数を無作為に割り当てた選択実験で得られたデータを用いて、潜在クラスロジットモデルを適用した推定の結果、政党数が増えると被験者集団の政策選好の差が広がっていくことが明らかになった。たとえば、被験者に表示される政党数が2つの場合、政策選好にもとづいて推定された被験者集団も2つに収斂される傾向にあり、表示される政党数が増えると被験者集団の数が増えるとともに各集団のシュアも均等化していくことがわかった。現在、これら結果の頑強性を他の実験データで確認中である。 第2に、covid-19に対する政府の政策が有権者集団の政策選好にもたらす影響を分析すべく、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が飲食店に与えた効果を推定するためのデータ収集と予備的な分析を実施した。分析の結果、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出されていた期間がながい地域ほど多くの飲食店が閉店、倒産していることが明らかとなった。このデータと昨年実施された衆院選データとを組み合わせることで、政府の政策による有権者集団の分断が選挙に与える効果を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度と比較するとコロナ禍においても調査、実験を実施する環境は整備されてきたものの、地域の移動や対面での実験が困難な状況が続いたため当初の計画が一部実施できていない状況が続いているため。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、昨年度実施できなかったラボ実験をできるだけ早い時期に完了させる。次いで、上述した調査実験の結果の頑強性を検証し、学会等で分析結果を報告してフィードバックを得ることを目指す。また、covid-19に対する政府の政策が有権者集団の政策選好や政治的価値観を変化させたのか、そしてその変化は投票行動にも変化をもたらしたのかどうかを上記データの分析によって明らかにする。これらの研究によって得られた知見は、論文としてまとめて海外学術誌への投稿を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
covid-19によって地域の移動および対面での実験の実施が制限されてしまい、計画していた実験の一部が実施できなくなったため、これらの実験については今年度あらためて実施することで当初の計画を完了させる予定である。
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