研究課題/領域番号 |
18K12709
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
濱野 靖一郎 法政大学, ボアソナード記念現代法研究所, 研究員 (10774672)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 開国期 / 外交思想史 / 松平定信 / 阿部正弘 / 堀田正睦 / 井伊直弼 / 頼山陽 / 天下の大勢 |
研究実績の概要 |
松平定信個人の思想を中心として本研究は計画された。しかし、コロナ禍により一昨年度末より史料調査に赴くことが不可能となり、従来見過ごされていたような史料に新たな光を与えるといった方向性を断念せざるを得なくなる。そのため、定信の開国に対する姿勢が、その後の開国期・維新期にどのよう無い影響を与え、かつ、評価されてきたかという通史的なものへと昨年度より方針を変え、研究してきた。 昨年度に新たに発見したものは、彦根藩主にして大老井伊直弼を開国派へと転換させた家臣・中川漁村の存在である。島田三郎の『開国始末』にて取り上げられ、嘉永六年のペリー来航に当り、唯一開国派の主張を直弼がしたのは、漁村の意見書によることは指摘されてきた。しかし、漁村が山陽の直弟子であることは等閑視されてきた。また、その意見書は定信の姿勢をかなり手厳しく批判していることも、重視されていなかった。 本研究は漁村による史料を彦根城博物館から複写史料で入手し、その翻刻と分析を行い、現在執筆中の『天下の大勢の思想史』に於ける1項として構成した。同書は定信からの「開国」に関する為政者の姿勢の変遷を「天下の大勢」を軸に論じており、外交思想史としての本研究の、通史としての成果と位置づけている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目玉の一つとして、徳川後期から維新期に懸けての「開国」に係わる思想史を通史に近い形で構成することを計画していた。当初は、定信を中心にして多くの分量を削予定であったが、コロナ禍のためそれを変更し、定信の方針がどう受け継がれたか、開国期を中心に構成している。前年度はその一つの成果として、『天下の大勢の思想史』と題する単著の原稿を草稿段階で書き上げた(400字詰め原稿用紙換算で700枚)。21年度はその推敲と発表に重点を入れる予定で或。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に書き上げた『天下の大勢の思想史』の推敲・改訂を中心に、単著として出版するのが最大の目標である。とりわけ、定信に対する評価をより増やし、維新期以降どのように理解され、流布していたかの整理を付けるのが目標である。また、同時に定信個人の儒学認識として、「大学」解釈を一つの論としてまとめ、発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、調査旅行が全く行えず、古書店からの資料購入にしか使用していないためである。21年度はコロナ禍の安定の度合いによっては、資料調査で使用する予定でいるものの、蔓延防止の現状のため、資料購入以外の活用は複写費に止まる可能性が高いことも想定している。
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