研究課題/領域番号 |
18K12710
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
梅川 葉菜 駒澤大学, 法学部, 講師 (60780517)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アメリカ政治 / 連邦制 / 三権分立制 / 大統領制 / 州司法長官 |
研究実績の概要 |
近年、大統領による実質的な既存法の書き換えを伴う政策変更に対して、連邦議会でも裁判所でもなく、州政府が、それを抑制する主体として重要な地位を占めるようになった。本研究では、一次資料の歴史分析により、近年、大統領の三権分立制を脅かすような行為を阻止する主体として州政府が台頭してきていることを指摘し、またその台頭の要因の解明を目的としている。 本研究課題の初年度である本年度は、当初の予定通り、初めて州政府らが協力して、三権分立制を脅かすような大統領の行動を提訴して勝訴した事例、すなわち、ジョージ・W. ブッシュ政権による環境保護関連法の不執行に対して12の州政府らが訴え、訴えが認められた事例について、一次資料を収集、分析した。資料収集に際しては、ブッシュ大統領図書館は利用せず、ワシントンDCにて州政府側の史料を収集した。ブッシュ大統領図書館にて資料を収集しなかったのは、渡航前の計画段階で、ブッシュ政権側の資料ではなく州政府側の資料が本研究課題にとって重要だということが明らかになったためである。 それから、関連する二次文献も渉猟した。特筆すべきは、本研究課題が当初想定していた以上に広がりがあったため、新たに、連邦政府から州政府への規制政策に関する権限委譲についての二次文献も収集し、整理を進めている点である。 以上の結果、ロナルド・レーガン政権期の権限委譲が州政府の訴訟戦略の台頭の要因の一つとして浮上した。この時期、「小さな政府」を目指すべく、環境規制を含む多くの政策分野の規制権限が州政府へと委譲され、連邦法執行に関して州政府の果たす役割が増大した。こうした変化により、州政府が連邦法執行に関して口を挟む余地が生まれ、大統領と意見が対立する際には訴訟に持ち込むようになった可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ブッシュ大統領図書館は利用せず、ワシントンDCにて州政府側の史料を収集した。ブッシュ大統領図書館にて資料を収集しなかったのは、渡航前の計画段階で、二次文献を整理している中で、ブッシュ政権側の資料ではなく州政府側の資料が本研究課題にとって重要だということが明らかになったためである。具体的には、当初想定していなかった連邦規制政策の権限委譲という大きな変化が重要な役割を果たしているかもしれないことに気づき、その点についての文献を整理する中で、注目すべきは、連邦規制政策について大きな役割を果たすようになった州政府側だと認識するに至ったためである。 そのため、当初の予定とは異なるものの、想定以上の収穫もあり、研究も着実に進展しているため、上記の区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、レーガン政権期における連邦規制政策の権限委譲が、本研究課題にとってどれほど大きな意味を持っているのかについて、一次資料と二次文献を用いて精査していく。また、本年度の調査により、州政府たちが、レーガン政権期に初めて、既存法の変更を伴うような大統領の政策変更を阻止するために、協力して訴訟を提起するようになっていたことが明らかにできたので、レーガン政権期にまで本研究課題の分析の射程を伸ばすことも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも資料収集の回数が少なくなったため、次年度使用額が生じた。次年度予算に組み込み、適切に利用する。
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