研究課題/領域番号 |
18K12710
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
梅川 葉菜 駒澤大学, 法学部, 准教授 (60780517)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アメリカ政治 / 連邦制 / 三権分立制 / 大統領制 / 州司法長官 / 州政治 |
研究実績の概要 |
近年、大統領による実質的な既存法の書き換えを伴う政策変更に対して、連邦議会でも裁判所でもなく、州政府が、それを抑制する主体として重要な地位を占め るようになった。本研究では一次資料の歴史分析により、近年、大統領の三権分立制を脅かすような行為を阻止する主体として州政府が台頭してきていることを 指摘し、またその台頭の要因の解明を目的としている。 本研究課題の3年目となる本年度は、当初の予定通りまず、大統領が不法移民関連法の不執行を試み、それに対して26の州政府らが訴え、訴えが認められた事例について、一次資料を収集、分析した。政権側の資料は、同政権が公表した文書、報告書、演説等を分析の中心とした。州政府側の資料は、訴訟の牽引役となったテキサス州司法長官とその関係者を主な対象とした。 当初、本年度は在外研究のため渡米する予定であった。そのため、この期間に時間的、経済的に効率よく資料収集できると期待し、前年度に予定していた資料収集(ウェストバージニア州司法長官が訴訟の牽引役となった事例に関して同州の州立図書館にて同州内の主要メディアの資料収集)に加えて、テキサス州の州立図書館にて同州内の主要メディアの資料を収集する予定であった。しかしながら、コロナ禍により在外研究はもちろんのこと、資料調査のための渡米すら叶わなかった。 そこで州政府の訴訟戦略の台頭の要因についてより長期的な変化に目を向けるべく、19世紀末からの州司法長官をとりまく制度変化に着目した。その結果、州司法長官の台頭の背景には、19世紀末からのパレンス・パトリエという法理の発展に加え、1970年代からの州司法長官に補完的な役割を期待した連邦政府による法執行権の付与の積み重ねがあったことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、コロナ禍のため、本来予定していた資料収集を諦めざるを得なかった。そのため、日本国内から収集できうる限りの資料を収集し、分析を進めることに加え、これまでよりも長い歴史を分析対象とした。その結果、近年の州司法長官の台頭が実は19世紀末からの制度発展に支えられていることが明らかになり、本研究課題の目的を大きく前進させることとなった。したがって、当初の予定とは異なるものの、想定以上の収穫もあり、研究も着実に進展しているため、上記の区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた資料収集に行けないままであるため、早い段階で資料収集に行く。コロナ禍もあり時間的、経済的制約がありうるので、効率よく資料収集できるよう事前の調査、準備、計画をいつも以上に念入りに行う。 他方で、コロナ禍の状況次第では資料収集に行けない可能性も十分に考えられるため、その場合でも研究成果をまとめられるような研究も進める。本年度、近年の州司法長官の台頭が実は19世紀末からの制度発展に支えられていることを明らかにしたものの、論証が不十分な点がある。そのため、関連する法学分野の研究と連邦制研究に依拠しながら問題点を整理し、インターネットで入手できる資料を中心に収集し、研究成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも資料収集の回数が少なくなったため、次年度使用額が生じた。次年度予算に組み込み、適切に利用する。
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