本研究は、1950年代の中国における「立法‐司法‐行政」のうち、中国共産党によって正統性調達と権威主義体制構築に利用されてきた立法権=人民代表大会に着目し、一次史料と政治学理論の双方を用い、さらに国際的要因も含めて検討することにより、従来ほとんど明らかにされなかった、当時の中国における三権分立と党の関係、これによって導き出される政治体制と、共産党による「党国体制」=独裁化の実態、およびそのための具体的手段を、人民代表大会の開催過程から検討するものであった。 本研究は主に①史料の収集・整理と、②政治学理論と先行研究の精読を行いつつ、③一定の史料収集が達成できた分野から順次論考を発表することが予定されていた。 ①については、残念ながら2020年度はコロナ禍の影響により、海外での資料収集を行うことができなかった。 代わりに②について、関連書籍の収集と精読に努めた。特に権威主義体制論や制度に関わる研究を通して知見を深めた。 ③については、1954年の憲法制定過程に関する資料の分析を進めているところである。同時に、昨年度のシンポジウムでの講演内容を論文として刊行した(「中華人民共和国の政治制度――創立期,「人民代表会議」制度を中心に(特集:近現代中国における「制度」)」『現代中国研究』第46号2021年3月)。
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